活力ある鹿児島づくり  -鹿児島の持続的発展を考察

LAST UPDATE:  Thursday, November 12, 2009

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                 I N D E X            



現状分析
鹿児島県の地域特性 :地勢 ・人口 ・離島 ・県民性
              ・
情報化:ブロードバンド化の遅れ,離島のブロードバンド化
経済ー県民経済:県内総生産 県民所得    ・県財政
交通事情:バス路線廃止,九州新幹線,おれんじ鉄道, 鹿児島空港,自動車登録台数
家計
 
観光: 観光苦戦, 鹿児島市の観光, 温泉, 岩崎撤退,
農林水産: 農林漁業の特徴, 鹿児島茶,, 鹿児島の水,花き,JA,漁業
商工業:商業(商業統計・鹿児島市の商業・イオン鹿児島) ・工業  焼酎     ・建築
  Ⅱ部   世界同時不況と鹿児島のダメージ
   Ⅲ部  本編  鹿児島県の持続的発展に向けて
         要約――鹿児島県の持続的発展に向けてのシナリオ
 
         ケーススタディ  南日本新聞 夕刊休刊にみる時代対応
鹿児島関連リンク集   鹿児島の本     篤姫・小松帯刀の本   おすすめ-鹿児島のホテル

                世界同時不況と鹿児島のダメージ    【 本編  


     

  大学の講義で,東京と鹿児島を往復するようになって4年目に入りました。1年中,コ-トなしですごせるという温暖な気候。歴史を刻み,昭和がしのばれるレトロな街並み。 そして,心やさく思いやりある多くの方々との出会いもあって,鹿児島の大ファンになりました。

 県都・鹿児島の街は,地方都市としては活気があります。特に繁華街・天文館の迷路状のアーケードの規模と,夜の賑わいには目を見張るものがあります。
 地域間の所得格差を計る代表的な指標である人口1人当たりの県民所得では,全国で下から5番目の43位(228万3千円・2006年),最低賃金は時給627円で宮崎,沖縄と並び全国最低,という経済面では低水準の県とはとても思えない,というのが実感です。

 ところで,気がかりなのは鹿児島の衰退です。人口は1955年をピークに減少に転じ,近年,加速傾向にあること。商業面では,鹿児島県の小売業事業所数は82年の3.1万をピークに,04年には2.1万と約30%減。この間の減少率は全都道府県中9番目の高位にあります。(経済産業省調査の「商業統計」による)。
 繰り返しになりますが,最低賃金が時給627円と全国最低というのは,鹿児島経済の低迷を物語っています。

  こうした状況に鹿児島の皆さんが手をこまねいているのではなく,様々な施策を練り,その実現に向けて取り組んでいる事を承知の上で,「平成維新」ともいわれる革新の時代への対応という視点マーケティングの視点から,鹿児島県経済が持続的に発展に向けての私見--活力ある鹿児島県のあるべき姿--を考察し,問題提起いたします。(写真は,山形屋百貨店)       

 問題提起-「このままだと鹿児島は溶けてしまうぞ」  


 「このままだと鹿児島は溶けてしまうぞ」とは,もとより鹿児島が地上から消滅する,ということではありません。“桜島と温泉”を旗印とした過去の成功体験,既成概念から抜け出し,新しい視点での発想----パラダイムシフト--を図らないと,時代に取り残される,との警鐘です。 この根拠が人口減少です。地域経済を表す代表的な指標の一つである人口は,1955年の200万人超をピークに減少傾向に転じ,2005年国勢調査の総人口は1,753,179人と2000年に比べ33,015人,1.8%の減少です。
 また,鹿児島県の基幹産産である農林水産業と観光ともに苦戦が続いています。

 鹿児島県は,2005年農業生産額で北海道に続き全国第2位となりましたが,後に続く千葉県,茨城県とは僅差です。また,農林水産業が地域経済に活力をもたらしているとは,いい難い現状です。名産焼酎はと言うと,大消費地の東京,千葉,神奈川では芋焼酎は宮崎県都城の霧島酒造の黒霧島に,麦焼酎では熊本,宮城県のメーカーに人気面では水をあけられ,多くの量販店の陳列の売れ筋-ゴールデンライン-から,鹿児島ラベルは外れています。お酢も名産品の地位にとどまり,大手メーカーミツカン酢のパワーに押され市場で影響力を発揮するにはいたっていません。

 また,経済産業省が05年発表の,中長期的に地域経済がどのように変貌していくかを具体的に展望した「人口減少下における地域経営について」によると,鹿児島空港周辺地域は経済活動はやや活発となるが,その他の県域は地盤沈下が著しいと分析・予測しています。

 06年度観光白書によると,国土交通省が初めて取り組んだ夏季(06年6‐8月)の都道府県別宿泊客数の調査結果で,福岡県は238万人で全国8位。九州7県では計791万人で,北海道の808万人に及びません。なお,全国の宿泊客総数は7760万人。都道府県別ではトップが東京(868万人)。次いで北海道,千葉(380万人),大阪(376万人)の順。九州内では福岡に次いで大分(120万人),熊本(119万人),長崎(108万人),鹿児島(103万人),宮崎(61万人),佐賀(42万人)。
 
 また,九州各県の宿泊者に占める県内宿泊者の割合は17~29%で,北海道の36%に比べて低く,地元客対策も課題となっています。この状況は,不景気や九州の南端に位置するという本県の地理上のハンデキャップのせいではありません。
 “桜島と温泉”の呼び込み文句が,時代ニーズ,すなわち時代の流れに合致していないと認識すべきです。

 鹿児島の方々が,“桜島と温泉”を愛し,郷土の誇りとすることになんら異存はありません。東京と鹿児島を往復するようになって1年。錦江湾に面したホテルの展望風呂の温泉につかりながら,噴煙なびく桜島を目の当たりにすると,なんともおおらかな気分となり,安らぎを覚えます。だが,それと観光面から見ての鹿児島の魅力とは別です。桜島と温泉をいくらアピールしても,国内外からの観光客の大幅な増加は見込めないのです。

 その理由は,三つあります。その一は,桜島と温泉が,県外に住む人にとっては,「オンリーワン」や「ナンバーワン」ではないことです。江別,天童,箱根,有馬,黒川,・・・・・etcと,日本各地に秘湯・名湯の類は数多くあります。絶対に鹿児島でなければというわけでもありません。「グラフ鹿児島 №458」でかごしまの魅力再発見として「天文館でお買い物」の代わりに「天文館でひと風呂」を推奨していますがピント外れもいいところです。

 山(活火山)の魅力も,富士山,浅間山,阿蘇山,・・・・・etc,と,名峰は全国に点在します。錦江湾に代表される海岸線の風光明媚さも,松島に代表される日本三景,伊豆,瀬戸内,房総,・・・・と,しかりです。熊本県の阿蘇には年間約1900万人を超える観光客が訪れています。対して,05年の鹿児島市観光統計によると,鹿児島市を訪れた観光客は約860万人にとどまります。これが,現実の姿,世間の評価なのです。

 なお,「グラフ鹿児島 №458」では,鹿児島の魅力再発見として“鹿児島の海岸線の長さが北海道・長崎に続き3番目とアピールしていますが,海岸線の長さが,県外の人を引きつけるとは,思えません。それには,道路,鉄道網の整備とこれに付帯する観光施設のハード面のみならずソフト面での充実が必須条件です。鹿児島には,それがありません。

 その二は顧客ニーズへの対応です。観光に関する普遍的ともいえるニーズとして,“安らぎ”“憩い”“歓楽”といった点があげられます。だが,こうしたニーズへの対応であるなら,関西,関東,東北,北海道の人たちは,なにも遠い鹿児島まで足を伸ばさなくても,身近で魅力ある場所は枚挙を問いません。“桜島と温泉”頼みでは,「鹿児島ナンバーワン」そして 「どうしても鹿児島に」という,国内外の観光客の心を強く揺さぶる魅力を欠くのです。

 その三は,時代の流れへの対応にあります。例えば,観光面では,従来の通過型・団体型の観光から,訪れる地域の自然・生活文化・人との触れ合いを求める交流型・個人型へと変化しつつあります。これはまた,お仕着せの団体旅行から,個人が旅行をつくるという単独旅行への移行でもあります。これに伴った街づくりが,観光客を呼び込む大前提となるのです。観光地は,新たな魅力を見つけ,地域をどう磨くか,という転換期に直面しているのです。鹿児島の観光戦略は,こうした認識,時代感覚を著しく欠きます。ちなみに,東国原宮崎県知事は,「日本発祥の地」という,宮崎県の新たな観光キャチフレーズを打ち出しています。

 こうした認識のもとに,100年に一度とも言われる経済危機,そしてライバルとして県域を接する熊本県宮崎県,新幹線全面開通に伴うストロー効果が懸念される福岡県,台湾をはじめ東アジアからの集客度を増している沖縄県, 北海道を 当面のライバルと想定し,これらのライバルや国際化の進展といった時代環境を見すえて,鹿児島県の持続的発展に向けてのシナリオを提示します。
            
           要約――鹿児島県の持続的発展に向けてのシナリオ
             本論--鹿児島県の持続的発展に向けてのシナリオ


 1 鹿児島県の地域特性


1-1 地勢・気候


 鹿児島県は,本土の西南部に位置し,その総面積は,約9,187平方キロメートルと全国第10位である。種子島,屋久島,奄美群島をはじめとする多くの離島は,県総面積の約27%と大きな比重を占めている。 中央部を南北に霧島火山帯が縦断し,北部の霧島から南海のトカラ列島まで七つの火山が分布し,豊富な温泉にも恵まれている。また,県内の大半の地域が火山噴出物でできたシラス層である。

 気候は温帯から亜熱帯の気候区に属し,地域により変化に富んでいる。県本土の年間平均気温は17,18℃で,年間降水量は2200mm,温暖多雨の気候である。一方,種子島,屋久島から奄美群島にかけては年平均気温19~22°Cで,年間降水量2300mmと亜熱帯気候に属する。

1-2 離島の多い県


 鹿児島県は離島の数では,全国4位である。種子島や屋久島,『Dr.コトー診療所』のモデルともなった甑島,奄美大島といった大きな島の他に,31の有人島と,6つの無人島がある。

*日本の島の数:「島とは,自然に形成された陸地で高潮時に水に囲まれ水面上にあり,植物の生育が認められるもの」との定義があるが,明確には定まってはいない。海上保安庁調査,「日本統計年鑑」によると日本の島の数は,6852である。この数字には歯舞群島,色丹島,国後島および択捉島も含まれる。
 
 鹿児島県の離島の存在意義としては,①観光光資源,②農水産物の生産・供給拠点,③日本の領海維持の3つがあげられる。

・ 奄美諸島 (名瀬市,大和村,宇検村,瀬戸内町,住用村,龍郷町,笠利町,喜界町,徳之島町,天城町,伊仙町,和泊町,知名町,与論町)
・種子島・屋久島 (西之表市,中種子町,南種子町,上屋久町,屋久町)
・その他の島 (里村,上甑村,下甑村,鹿島村,東町,三島村,十島村)

 三島村は屋久島の西に位置し3島4集落がある。十島(とから)村は種子・屋久の南にあって南北に連なり,有人7島がある。交通手段は両村とも週2~3便の定期船のみで,鹿児島市からの所要時間は三島村まで片道3~6時間,十島村まで片道6~13時間である。

 離島にかかわる問題点として,医療問題がある。三島村は2000年まで,十島村は02年まで無医村だった。無医村当時は,鹿児島赤十字病院から定期船を利用した巡回診療が行われていた。現在は各島の診療所に,赤十字からの派遣医師が常駐している。
 脳卒中や外傷などの 救急患者発生の場合,定期船による搬送では時間がかかるため,ヘリコプターを使うことも多い。1991~2002年の12年間で,約230件のヘリコプター搬送がおこなわれた。
 ヘリコプター搬送の問題点,第1に気象条件に左右され,悪天候のために飛行できないことがある。第2に,鹿児島県には救急医療専用のヘリコプターおよびヘリポートがない。第3は,現用のヘリコプターはドクターヘリではなく,医療設備が貧弱で,騒音も大きい。第5は,離島によっては,ヘリポートの未整備,照明設備が不十分なところもある。なお,鹿児島市のヘリポートが郊外であることから,到着着後,高次医療機関まで搬送に相当の時間を要し,患者にとっては大きな負担となっている。




まち楽 鹿児島-鹿児島の名産品を探す

 2 人口

 県人口は,1955年の200万人超をピークに減少傾向にある。05年国勢調査の総人口は1,753,179人と,00年に比べ33,015人,1.8%の減少である。この間,県庁所在地・鹿児島市の人口は,周辺都市との合併もあって,55年の31万4千人から05年国勢調査確報値によると604,367人と増加し,県全体の34.5%を占める。なお,鹿児島市の人口は,周辺都市との合併もあって人口は増加したが,県全体の人口減少を食い止め得るまでには至っていない。

 厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所(社人研)の推計によると,鹿児島県の全45市町村の人口が,2035年は05年に比べ全市町で減少する見通しである。最も減少が著しいのは南大隅町で,05年の約半数52.2%に落ち込むと予測している。


・県の過疎地域人口比率は全国第4位--鹿児島県

 過疎地域については,00(平成12)年4月1日,新たに09(平成21)年度までの10年間の時限立法として,「過疎地域自立促進特別措置法」が施行された。
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・人口--鹿児島市一極集中
 鹿児島県は人口1位が鹿児島市の55万人,2位鹿屋市が8万人,3位が川内市が7万人。鹿児島県には14市あるが,鹿児島市の人口はそれ以外の13市の人口の合計よりも多い。鹿児島地域,姶良・伊佐地域への人口集中が進み,鹿児島市一極集中の様相にある。

鹿児島の過疎地域人口比率は全国第4位--  

 過疎地域については,00(平成12)年,新たに09(平成21)年度までの10年間の時限立法として,「過疎地域自立促進特別措置法」が施行された。

郡市名

  町村 区域名

21

331

332

鹿児島市

旧桜島町の区域

鹿屋市

旧輝北町,旧吾平町の区域

阿久根市

 

   ○

大口市

 

     

指宿市

 

 

西之表市

 

垂水市

 

薩摩川内市

旧樋脇町,旧入来町,旧東郷町,旧祁答院町,旧里村,旧上甑村,旧下甑村,旧鹿島村の区域

 

日置市

旧東市来町,旧日吉町,旧吹上町の区域

 

 

曽於市

 

 

 

霧島市

旧横川町,旧牧園町,旧福山町の区域

南さつま市

 

志布志市

奄美市

鹿児島郡

三島村

 

十島村

揖宿郡

頴娃町

川辺郡

知覧町

 

川辺町

薩摩郡

さつま町

出水郡

長島町

「限界集落」が,県内の全6782集落の3・8%に当たる258集落

 07年末の県の調査によると,65歳以上の人口が半分を超えている集落が全体の13.9%にあたる943集落あった。地区別では,大隅304,姶良・伊佐227,南薩136,北薩130,鹿児島56,大島52,熊毛38――である。65歳以上の人口が50%を超え,「水田や山林などの維持保全ができない」「冠婚葬祭など日常生活における相互扶助ができない」など共同体の維持が限界に近づいている「限界集落」が,県内の全6782集落の3.88%に当たる258集落であることが,07年末の県の調査で明らかになった。

○2035年推計 鹿県,全45市町村人口減/厚労省研


 厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所(社人研)の推計によると,鹿児島県の全45市町村の人口が,2035年は05年に比べ全市町村で減少する見通しである。減少が最も著しいのは南大隅町で,05年の約半数52.2%に落ち込み過疎化が急激に進むと推計している。
 県全体の人口は,138万8852人で,05年の79.2%となる。全国は05年の85.6%で,減少割合は全国より大きい。
 20%以上減少するのは,8割以上の38市町村。このうち人口減が一番なのが南大隅町,続いて錦江町(05年比54.8%),肝付町(同58.7%),瀬戸内町(同58.9%),曽於市(同61.3%)の順。 鹿児島市(同88.2%),霧島市(同89.3%),鹿屋市(同84.9%)も減少する。

  一方,65歳以上が40%以上を占める自治体は,1町から29市町村に急増。特に錦江,南大隅,与論の3町は65歳以上が過半数の「限界集落」に近い状態となる。
 20年には14歳以下の年少人口割合が10%未満の自治体が10市町村出現。35年には23市町村に増え,少子高齢化が一段と進行すると推計している。
 その理由として,社人研は「若年層の流出が,全国平均より多いため,減少の速度が速いのではないか」としている。


県別に見た将来人口(単位:千人)

 

2005

2010

2015

2020

2025

2030

 注)05年は実績値
 資料)総務省「国勢調査報告」をもとに、九経調推計

全  国

127,768

127,298

125,497

122,343

118,078

113,065

九州・沖縄8

14,715

14,534

14,233

13,807

13,273

12,664

5,050

5,037

4,982

4,878

4,730

4,548

866

848

822

789

751

710

1,479

1,426

1,362

1,287

1,205

1,118

1,842

1,808

1,759

1,695

1,619

1,535

1,210

1,185

1,150

1,104

1,049

990

1,153

1,125

1,087

1,038

981

919

鹿児島県

1,753

1,706

1,647

1,576

1,495

1,408

1,362

1,398

1,425

1,440

1,443

1,435






   

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