要約――鹿児島県の持続的発展に向けてのシナリオ

脱観光−−観光主体の地域政策からの転換を

 要約――鹿児島県の持続的発展に向けてのシナリオ

 幕末から明治維新の時代にかけて,薩長連合,薩土盟約を通じて,日本近代化に多大の貢献をした歴史を持つ鹿児島県ではあるが,近年,停滞の構造から抜け出せないでいる。人口が減少し,IT革新とグローバル化が進展するという新しい時代にあって,「桜島と温泉」を売り物とした観光主体の地域振興策では,少子高齢化社会に伴う縮小の時代を乗り切ることは難しい。

 鹿児島に関しては,脱観光につきる。いまや観光主体の地域政策からの転換の時期に来ている。その理由の最大は,観光の目玉とする桜島と温泉,そして風光明媚な錦江湾の三点セットは,鹿児島のコアコンピタンスとは,ならない点にある。すなわち県外に住む人にとって,桜島や温泉は,「オンリーワン」や「ナンバーワン」ではない点にある。江別,天童,草津,箱根,有馬,黒川,・・・・・etcと,日本各地には秘湯・名湯の類は数多く,絶対に鹿児島の温泉でなければというわけでもない。山(活火山)の魅力も,富士山,浅間山,阿蘇山,・・・・・etc,と,名峰は全国に点在する。錦江湾に代表される海岸線の風光明媚さも,松島に代表される日本三景,天橋立,伊豆,瀬戸内,房総,・・・・と,しかりである。隣県熊本の阿蘇には年間約1900万人を超える観光客が訪れている。対して,鹿児島市観光統計(05年)によると,鹿児島市を訪れた観光客は約860万人にとどまる。これが,現実の鹿児島の観光資源に対する日本国内の評価と受け止めるべきである。

 なお,鹿児島の魅力再発見として“鹿児島の海岸線の長さが北海道・長崎に続き3番目とアピールしているが,海岸線の長さで県外の人を引きつけられるとは,とても思えない。それには,道路,鉄道網の整備とこれに付帯する観光施設のハード面のみならずもてなしの心(ホスピタリティー)に代表されるソフト面での充実が必須条件であるが,いまの鹿児島は,それが欠ける。
桜島と温泉をいくらアピールしても,地域経済の活性化につながる観光客の大幅な増加,すなわち,地域経済の発展への寄与は見込めない。

 今のままだと「鹿児島の人口は減る一方」だという現状認識が重要な前提である。人口減少化社会の到来といえども,県内人口の減少を止められなければ,鹿児島の再生は難しい。人口減少は県内マーケットを縮小させ,税収は減り,財政悪化を招くなど,県域経済に多大な負の影響を及ぼす。このような事由から,鹿児島で暮らす人々が「不安のない,豊かな生活」を送っていくためには,一定の経済力が必要であり,そのためには定住人口の増加が不可欠となる。その実現に向けて何をなすべきかについて,次ぎの3つの策を提案する。

@まず,住みやすき暮らしやすい鹿児島をつくる
 鹿児島の風土は,よい空気・よい空,よい水,ストレスの少ない街並みは時代が求める魅力でもある。交通体系を再構築して県域全体の住みやすさ,暮らしやすさの追求も大切だ。その手始めが足許を固めに向けてのコンパクトシティ構想による住みやすい地域づくりにある。
  この,「住みやすく,暮らしやすい街づくり」を通じて,都会暮らしの高齢者の移住を促し,人口増加を図る。

A日本,世界の食糧基地を目指す
 いま,日本は食料の60%を外国に頼っている。水も食料の形で輸入している。ドイツ16%,イギリス30%など他の先進国より低水準となっており,食料の国内自給は,火急の政策ともなっている。
鹿児島県の06年農業生産額は,4079億円で全国第2位。特に,牛,豚,鶏の産出額は全国第1位である。この他,ウナギ,茶,いも類など,生産量の多い農水産品は数多い。この実績を生かしての日本,世界の食料基地を目指す。

B南九州の物流拠点化
 幸いなことに,鹿児島県は港・空港・鉄道・高速道路といった大量・高速の物流インフラを有する。日本の輸出入貨物量の99%以上が海上輸送である。グローバル時代を迎えたいま,「世界を相手にする」という気概を持ち,港・空港・鉄道・高速道路といった大量・高速の物流インフラ有するという以上本県のもつ魅力,強みといった特性を生かしこの有機的活用により日本の農業基地,さらには北九州自動車工業圏とのリンクを図り,南九州の物流の拠点を指向する。

                                   本編

     

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