5 メーカーのエリアマーケティング(編集中)
LAST UPDATE: Wednesday, August 05, 2009
生産財(ビジネス市場)と消費財とでは,流通経路,顧客層などが異なります。
5−1 生産財,消費財マーケティングの共通点
生産財メーカーと消費財メーカー両者に共通するのは,顧客の満足する製品を開発・製造し,効率よく販売していくかです。とくに,品質や性能に大きな差がみられない分野では,製品がいかに適品・適時・適量の3条件を満たして,顧客の手に届く物流体制を作りあげていくことが,競争相手との差別化を実現する策でもあります。
全国一律のマーケティングでは,十分な対応が難しいことから,地域差に立脚したマーケティングの展開,すなわちエリアマーケティングは,消費財メーカーのみならず,生産財メーカーにとっても重要な課題です。
なお,小売業のマーケティングが,店の売上高の向上につながる来店客数,客単価の増加を目的としているのに対し,消費財メーカーのマーケティングのねらいは,自社ブランドのシェアを高めることにあります。
出典:『基本エリアマーケティング』 小林 隆一著
5−2 消費財と生産財のマーケティングの相違点
生産財は,製造業者がそれを材料や部品として他のものを製造するという再生産のために使用します。消費財は,日常生活を営むうえで消費されていきます。
@生産財と消費財では,顧客層が異なる
市民生活を営む消費者向けに製造されたものが消費財です。消費財はその耐久性によって耐久消費財と非耐久消費財に分けられます。非耐久消費財は,その用途によって生活必需品をコモディティグッズ,これ以外をノコモディティグッズとも分類します。
生産財は,消費財や生産財を再生産するために使用されるもので,原材料,部品,工具,機械設備などを指します。エリアマーケティングを推進するうえで,細かい製品分類はともかくとして,消費財と生産財の,用途の違いにより顧客層(エンドユーザー)が異なることをを理解しておくことが重要です。生産財メーカーのマーケティングは,特定の顧客層に絞り込まれます。それに対して,消費財メーカーの,マーケティングは消費者全体を対象とした広範におよびます。
なお,顧客も再販売者,再生産者あるいは消費者かによってカスタマー(代理店・特約店・小売店)と,コンシュマー(法人,団体といったエンドユーザー・家計消費者)に分けられます。
5−3 消費財メーカーのエリアマーケティング
全国展開している消費財メーカーの目標は,地域あるいは小売店の店頭における自社製品のシェアを高めることにあります。メーカーの市場目標を担う卸売業やメーカーの支店,営業所は,自身の業績を上げるため営業地域(商勢圏)における小売店頭の自社シェア(インストア・シェア)の拡大,取引先小売店を増やすこと(小売店カバレッジの拡大)にあります。
直接の顧客である問屋や小売店への対応策に終始することなく,最終顧客である消費者ニーズへの対応がシェアアップ,ブランドロイヤリティ獲得の方策です。
◆ 最終顧客(消費者)は何を求めているかを追求する
メーカー→問屋→小売業と,流通経路が長い商品の場合,とかく卸売業,小売業といったルートに目がいき,最終顧客である消費者のことはおろそかにしがちです。
メーカーは,小売店に商品を納めると,それで取引は完結したと考えがちです。その背後には最終顧客(消費者)がいます。消費者が店頭で自社商品を購入してくれて,マーケティング活動は一段落します。
「自分の意思で自分の財布を開く人」,最終顧客こそが実質的に市場を動かしています。したがって,直接の顧客である小売業や卸売業の声だけで市場を判断しないこで,最終顧客である消費者の動向にも目を凝らす必要があります。
最終顧客の声をよく聞き,状況を観察し,その不満,不便,不安,問題,不快といったニーズを解消する手だてを高じることがシェアアップ,ブランドロイヤルティの獲得に直結します。街や店は,時代を映すカガミでもあります。スーパーや百貨店でなにが好評か,繁華街の変化の方向は・・・など,街に出て自分の目でトレンドを読みとる選択眼は,消費動向を知るうえに大変役立ちます。
◆ 地域格差の解消 (編集中)
地域格差解消のテーマとしては,次の2つに集約されます。
商品別,ブランド別のマーケットシェア格差解消
小売業態別の売上格差を解消
◆ メーカのエリアマーケティングの事例 (編集中)
花王――70年代にエリア・マーケティングに着手
花王が地域を細分化し地域特性を分析する試みに着手し始めたのは1970年(昭和45年)頃からです。その背景には,“商品ごとの各地域におけるシェアは決して平準でなく,地域格差は歴然としている。これらの格差は歴史的・文化的差異から生まれる。」といった,問題認識にあります。
地域シェアの差異と変動の原因は,一つには地域卸業の競争関係が,商権という前近代的な権利意識のもとで小売業者を系列化している傾向が強いこと。二つには宣伝における地域的な競争関係の歪み,さらにTVネットワークにおける系列の問題,番組視聴率の地域別の凸凹,新聞の地域的強弱関係などがあることを突き止めました。
たとえば,「住居洗剤は,北海道では他の地区の数倍も消費されるのは,地域における生活態度・行動特性に基づくものである。地域に密着して需要開拓しなければ売上は期待できない」という結論に達しました。以来,地域特性対応のマーケティング活動に全社をあげて取り組んでいます。
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5−5 生産財のエリアマーケティング
生産財メーカーの市場細分化の軸としては顧客別、販路別、地域別といった細分化区分が考えられます。支社、営業所単位の場合は、「エリア区分」による市場細分化が有効です。
■エリア細分化により有望顧客を見いだし、取引の拡大を図る
限られた顧客をライバルと取り合うという状況では、「既存顧客をいかに維持するか」 が重要です。「1件の既存顧客を失った損失を埋めるには7件の新規顧客が必要」というほどです。
顧客プロフィールを詳細に把握し、顧客ごとの要望に合った製品やサービスの提供というきめ細かな対応が顧客との信頗関係を深め、固定客化を促します。当然のことながら購買力の低い顧客へのきめ細かな対応は、「労多くして益」は期待できません。そこで、重点エリアを設定し、そこから利益を見込める有望顧客を探り、育てるといったエリア深耕策が営業成果を生みます。
次の手順で、重点エリア・重点顧客を特定します。
1 エリア別に現在の総需要、今後の市場の伸び、およびライバルのシェアを推定する。
2 社内データにもとづく自社シェアを算出し、ライバルとの相対比較を行う。
3 分析データを使い、ABC分析やPPM分析などで総合評価して、重点エリア,重点顧客を定める。
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