last updated:Monday, November 07, 2011          

    1 ビジネス文書(文章)の書き方 

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2 文章表現のコツ
 わかりやすい文章構成
vol.4 推敲
vol.5 構成
vol.6 レイアウト
vol.7 
vol.8 
vol.9 著作権
vol.10 文章の本



マニュアル講座

文章作成に役立つPCツール





   


 小説,エッセイといった文芸や文学分野の文章は,自身の思いや発想などを読者に訴えかけるといった,感情表現に重点を置いた文章表現をとります。
 対してビジネス場面で使われるビジネス文章は,事実をどのように「説明」「伝達」すれば,読み手の理解を得られるかという−「伝える文章」「説得・納得を得る文章」を目的とします。
 このようなビジネス文書の役割,目的からして,“良いビジネス文章の条件”は,知らせたい・伝えたい事柄を,「正確,簡潔,明解」に伝え,それを読んだ相手の,「共感,あるいは納得」を得られることにあります。

事実・情報・意思の説明・伝達→目的意識、問題意識が共有化され相互理解が実現

       ◇            ◇

 英文では,多くは冒頭で言いたいことをずばりと提示し,後からその理由づけや補足をしていくという書き方(演繹法:deductivepattern)をとります。
 対して,日本語の文章(文書)では,多くの場合,個々の状況,結論につながる前提などから書き始め,最後に自分の主張,言いたいことといった結論部分を書くという,<帰納法:inductivepattern>に準じた書き方をとります。この典型的な文型が「起・承・転・結」型です。

  日本語の文章が,「起・承・転・結」の文型を取る背景には,「以心伝心」という言葉にみられるよう,細かく説明しなくても読み手はわかってくれるという期待(甘え)の文化がある,とされます。
 また,同一民族で同質性の高い社会であるため,それほど細かく説明せずとも,お互いに理解できるという社会風土がある,ともいわれています。

  だが,スピードある意思決定が要求されるビジネスの場では,「結論」が一番最後にある文章では,読み手をイライラさせ,「文章で伝える」という文章の役目を果たせない恐れがあります。
 そこで,結論を先に書いてから,そのり「なぜならば・・・・」と理由,根拠を示すようにします。
 

    内  容

      目   的

日記

自分自身のための文

自身の記録

小説

芸術作品としての文

意思・思想の伝達−共感を得る,鑑賞  

ビジネス文書

事実や意見を伝える文

情報伝達−同意を得る,説得する,動機づけ


 ビジネス文書の書き方 

 ここでの「ビジネス文書」とは,ビジネス活動の諸場面で作成する文書一般を指します。
 

  • 一般文書:主として文章表記によるもので,伝達されるべきことがらの内容や表示形式が不定な,形式未定の文書を指す。


 自分自身のために書く日記や手記に対して,ビジネス文章は,事実や自分の考えを文章にまとめ,それを相手(顧客・上司・取引先など)に読んでもらい,相手の理解と共感,さらには納得を得る事を目的とします。

  こうしたビジネスレポートの特性から,ビジネス文書は,@説明力と説得力---合理的に説明できる根拠が筋道立てて記述されていていること,A簡潔明解で-読みやすいこと,が求められます。  

 第三者に説明するための文章を書くときの7原則
 
1 読者(読み手)は未知の相手である。相手に寄りかかって負担をかけない。
2 文章とは第三者への説明であることを,心しろ。
3 事実に基づいて記述する。感じたことは第三者にとっては事実とは限らない。
4 事実を説明した部分と事実に基づいた解釈や意見の部分は分けて書く。
5 考えをまとめるとは段落を構成して説明することである。自分の考えた順序ではなく、相手が理解しやすい順序にしたがって説明する。
6 一段落には一つのまとまった内容を書く。その場合、重点先行主義を貫く。
 主要な(相手に全体の輪郭を理解させる)部分を最初に述べ、後から順次細部を説明する。
7 主語と述語の関係を明らかにすること。

 
 参考:『言語表現技術ハンドブック』 大阪工業大学言語表現技術研究会編 晃洋書房

1−2 ビジネス文章の作成手順

 伝えたい事実,あるいは自分の主張,考え方を簡潔に綴り,そして説得力ある文章にするには,事前準備が肝心です。文章を書く本人がその目的や意図を完全にまとめておかないと,筋道がキチンとせず,文脈もあいまいとなりがちです。そこで,やみくもに文書を書くというのではなく,まず,文書作成の目的を確認し,全体のバランスを考え,構想をたてます。
 とくに,200字〜300字程度の短い文章は,少しばかり足したり削ったりすることで,全体のニアンスが変わってしまいます。このような理由から,じっくり構想を練るようにします。

 図1は,課題に対し,実際に文書を作る手順の事例です。@〜Dのステップを順序通りに行ったり,戻ったりしながら進めます。




@目的・前提条件の確認

 この文書は,「何のために書くのか」「何を・どんなことを伝えたいのか」といった,文書作成の目的の確認,そして,「だれに向けて・何を伝えなければならないか」といっう文書作成の目的,主題,そして伝達相手を明確にし,その中身を洗い出します。
 なお,不特定多数の読者を対象とする文章の場合は,平均的な読み手・読者の暮らしぶりや考え方,年齢,職業などを思い浮かべてみます。
 

◆ ビジネス文章が機能する7つの要素
 WHY  : 文章作成の目的は            (           )
 WHO  : 読み手・読者はだれかは       (           )
 WHERE: 読み手・読者の知識水準は     (           )
 WHAT : テーマは・何を伝えたいのか       (           )
 WHEN : 期限−いつまでに書くのか       (           )
 HOW to  : 作成方法・体制            (           )
 HOW much: 費用・予算             (           )

全体構想の立て方――あらすじを組み立てる

 自分の言いたいことを的確にまとめ,しかも説得力あるものにするには,それなりの事前準備が必要です。やみくもに書くというのではなく,目的・テーマに沿って,全体のバランスを考え,構想をたてます。

 文書の全体構想をたてるには,まず頭の中を整理してみることです。米国の心理学者J・P・ギルフォードは,思い浮かぶアイデアを次々に出していくことを「拡散思考」,逆によいアイデアを拾い出して問題解決策へと結びつけていくことを「収束思考」と名づけました。文章の構想を練るにあたっても,この正反対の二つの思考の使い分けが有効です。

 レポートや論文の構想をまとめる方法の一つとして,付箋紙(ポストイット)を使っての方法をご披露します。

第1ステップ――自由連想・アイデアを拡げる
  目的・前提条件を満たすために何を書くべきか,頭の中の漠然としたことを,思いつくままにカードあるいはポストイットに箇条書きします。その内容は順不同でかまいません。また,この段階では,思い浮かんだことがらの,妥当性の判断はしません。
 このように「拡散思考」で書き出したカードあるいはポストイットは,B4あるいはA3サイズのコピー用紙などの白紙に貼り付けていきます。

第2ステップ――分類・並べ替え
 アイデアの生まれた順位白紙に貼り付けたカードあるいは付箋紙(ポストイット)を,類似性や共通点のあるもの同士で幾つかのグループに分けて,並べ替えます。この段階で,事実と異なるアイデア,文章作成の目的から逸脱したアイデアは,破棄します。
 この分類・並び替えの作業を通じて,不要な部分を捨てます。


第3ステップ――整理・表札づけ
 分類・整理が終わったら,それぞれのグループにその内容や特徴を簡潔に示すタイトルやキーワードをつけ,それを表題として書き込みます。

第4ステップ――あらすじ・アウトライン−をまとめ
 第3ステップの分類・整理を吟味し,不要な部分を捨て,説明するための構成,順序立てを考え,全体構成をまとめます。

Aレポート(文書)構成の定型・・・「起・承・転・結」−−

 伝統的な文型に「起・承・転・結」型があります。「そもそも」に始まり,「すなわち」で承けて理由・根拠・経緯などを書き,「ひるがえって」と転じて他の例をあげるなどして,「要するに」で結ぶ,という順を取ります。
 「起」は文を書き起こす部分で,「承」は「起」を承けて論旨を展開する部分。「転」は論旨を違った角度から見て,最後は結論の「結」で終える構成です。
 この「起・承・転・結」のパターンは,小説・エッセイ・コラム,あるいは私的な手紙など,多くの分野で用いられています。

  「起承転結」型の文体は,結論部分が一番最後にあることから,まわりくどさから,読み手をいらつかせる恐れもあります。
 特に,スピードが要求されるビジネス分野では,誰しもがより速く文章を読み取りたいと思っています。そこで,読み手をいらつかせる冗長な文体では,読み手をイラツカセることとなります。
 
  能率が優先されるビジネス文章に合致した文型に,次の3つがあります。 

文型1: 「結論→根拠・理由」

 「起・承・転・結」型の構成は,ビジネスレポートには適しません。「要するに」という結論が最後に来るというところから,読み手にとっては,「結論を早く知りたいのに」,前書きがダラダラ続いたのではまどろっこしいのです。 
 そこで,問題の背景,現状説明といった序論に当たる部分は省いて,「要するに」という結論あるいは文章全体の要約を,最初に書き出します。結論や総論部分を先に掲げることによって,書き手の意思が,短時間で明確に伝わります。
 そのあとに,「何が問題か」「なぜ,そう言えるか」といった,問題の背景,根拠,理由など,主張の裏付けを記述します。

文型2:「問題の前提・問題提起→理由→結論」

 目上に人やまだつきあいの浅い人に対しては,いきなり結論は書きにくいものです。そこで,冒頭で「問題の背景」や「現状」,あるいは「なぜ,そう言えるか」に関する根拠,理由など,問題の前提をあらかじめ記述したうえで,結論部分に入るのも一つの方法です。

文型3:「問題の前提・問題提起→意見提示→結論」

 反対意見や反論などの場合,いきなり「・・・に反対です」と切り出したのでは,反感や反発を招きかねません。こうした事態を避けるため,Yes,butで「たしかに・・・であるが,しかしながら」という文体をとります。


B原稿作成に当たってのチェック事項

 ・主題(タイトル)のつけ方は適切か
  主題(タイトル)は,テーマや目的に対応しているか
 ・構成や見出し,段落の立て方
  構成は筋道が取れていること。そして,内容や目的がひと目で分かること。


C執筆-文章作成

 不特定多数の読者を対象とするビジネス文章の場合は,平均的な読み手・読者の顔を思い浮かべてみます。読者の顔が想像できれば,「こう書くと興味を示してくれるだろう」とか「こんな経験をしたことは少ないだろうから,飛びついてくるに違いない」という見当がつくものです。そうすると,「何を」「どのように」書けばよいかが,自然と思い浮かんできます。

 ビジネスレポートの役割である読者の理解と共感,納得を得るには,読者の知識,能力レベルに合わせた書き方であることが必須条件です。
 なお,読者の知識,能力レベルが不明の場合は,読み手は関連知識を持たないと想定して,中学生,高校生レベルの知識や技術を想定して執筆すると良いでしょう。

・専門用語の使い方は,読み手の知識・技術水準に見合ったわかりやすい表現とする
・和製英語,外来語などの薄い言葉には,最初に記述した箇所で説明をつける
 なお,宣伝広告文の場合は,不当表示あるいは誇大広告に陥らないように留意を要します。とくに不当景品類及び不当表示防止法 (景品表示法)を遵守し,誇大表現(広告)とも疑われかねない,「日本一」「最高級」「完全保証」といった,言葉の使い方には細心の注意を払ってください。


D推敲

 推敲することで体裁が整い,論理性や合理性も磨かれます。書き上げた文章を読み直し,書き直す作業が「推敲」です。推敲にあたっては,「自分の言いたいことは伝わっているか〜」「ほんとうに適した表現か〜」「全体のまとまりはいいか〜」「差別表現はないか」などを,チェックします。推敲に推敲を重ねることが,読みやすさの条件でもあります。

 ・見やすい箇所で改いページする。
 ・グラフや数表には番号を入れ,出典を記載する。

Eパソコン入力

 パソコンを使って,原稿の入力作業を行います。

F校正

 校正は,原稿の通りにパソコンに入力されているかを,原稿にてらしてあわせる点検作業です。誤字や脱字などを訂正し,見出しやカコミ・前文・写真説明などが指定どおりに正しく組版されているかを点検し,訂正を指示する作業です。

G校了

 パソコン入力→校正作業を,2〜数回繰り返し,原稿を仕上げます。


1−3 文章作成の基本


ビジネス文章は,相手に知らせたい情報を「正確かつ,簡潔に,しかもはやく」伝え,それを読んだ相手に何らかの「行動を起こさせたり」,また後日の「証拠や資料」となるものです。

@ 正確性
 ビジネス文書は,要件を伝達することを目的とするところから,何よりもまず,「正確であること」が求められます。正確性の要件としては,次の3つがあげられなす。
 第1に内容にもれがなく,また,事実関係に誤りがないこと。
 第2に記載されている数字や日付などが正確であること。
 第3に添付書類や参照資料などに誤りがないこと。

 また,誤字,脱字などのないことが,ビジネス文章の必要条件です。誤字,脱字は読みにくいだけでなく,意味のとり違いといった事態を招きかねません。

A事実と意見は区別して記述する
 事実と意見を明確に分け書くことによって,読み手は事実は事実,意見は意見として正しく情報伝達することができます。

B具体的な根拠を示して立証する

 「すごく便利」「たくさん」「絶対的」・・・・といった抽象的な表現は,具体性を欠き説得力や説明力を欠きます。数値データや事例など根拠を示すことによって,説明力を持つ文章となります。

1−4 「伝わる」文章のつくり方−文章技術の向上に役立つ3つのコツ

@書き方のコツ

コツ:一文を短く書く
 文の書き出しから、文末の「。」までの「一文の長さを,35〜55文字程度とします。なんだか文がこんがらがってきたな,と感じたら「。」で文を分けてみるのも一つの方法です。

コツ2:箇条書きを使う
 箇条書きにすると,一つひとつの文が区切られるので,ひと目で全体が俯瞰できます。

・テーマ(目的や書きたいこと)を確認する
・テーマに関する事柄をできるだけ多く思い浮かべる
・一項目15〜30字くらいの短文で記述する

コツ3:漢字は少なく−−漢字とかなの割合は3:7を目安とする
漢字が多いと、堅苦しい文となりがちです。文中の漢字の割合は、3〜4割を目安とします。
 
A読みやすさにつながる三つのコツ

1 あいまいな表現をさける
「・・・等」といったことばは,含みを持たせる意味で使われます。この他にも「・・・と思われる」といった断定を避ける言い回しもあります。これらの言葉は,ともすると曖昧で正確さを欠くことからレポートや論文では,極力使わないようにしましょう。

・多数の…「400〜500」のといったような具体的表現とする。


2 大事なこと,重要なことから先に書く
 書き手として最も強く表現したいことは何か、また、読み手が一番知りたがっていることは何か,を見極め,それを文章(文書)の重点として早めに打ちだします。

3 余分な文は削る
 大量のデータが飛びかい,スピードが要求されるビジネスの場で,情報伝達の役割を担うビジネス文章は,「余分なことは書かない」ことが肝心です。不要な情報を省いた,簡潔表現が,無用な混乱を防ぎます。

4 記号の有効活用
 電子メールや携帯メールの普及で,「記号・符号・しるし」といった記号類は,新たな意味・用法を生みだし,「漢字/平仮名/カタカナ/アルファベット」に続く“5番目の文字”として市民権を獲得しつつあります。インターネットを媒体とした書籍や携帯小説などの普及は,こうした動きを加速させています。

 記号類を使い,文字の記述では伝えきれない感情やニュアンスを表現するばかりでなく,芸名や書名などの固有名詞に「記号・符号・しるし」を使用して個性をアピールする例も見られます。こうした使い方は,今後一段と盛んになると予想されます。

 しかしながら,その使い方は,これまでの記号類の標準的な使い方から逸脱しているものも少なくありません。記号類には本来備わった意味・用法があります。それを知って使いたいものです。

▼『記号類−−句読点,記号・符号−−の使い方』
 そこで,『記号類−−句読点,記号・符号−−の使い方』を,近日中に掲載を予定しています。おこでは,「記号・符号・しるし」について,基準・範となる意味・用法と,パソコンによる記号類の入力方法を解説します。

5 日常使いなれた言葉,文字で書く
 難しい語句の使用を避け,相手によくわかる表現とします。そのためには,難しい語句の使用をさけ,日常一般に使用されている言葉を用いることが肝心です。。
 ・理解しにくい言葉や文字,専門用語をさけ,日常使いなれたやさしい言葉を使用する。
 ・専門用語,業界用語には説明をつける

 ら抜き表現−−−ら抜きは,文字どおり,「ら」が抜けている表現を指す。

 「ら抜き表現」とは,本来「食べられる」,「見られる」,「出られる」などとすべきところを,「ら」を抜いて,「食べれる」「見れる」「でれる」とする口語的表現です。現在,学校で習う用法では「食べられない」「見られない」といったように,「…られる」を接続するのが正しいとされており,NHKの放送用語をはじめ,新聞・教科書なども,この「ら抜き」表現は認めていません。
 現実には,「ら抜き表現」の流れは止まりません。「ら抜き」は少数派ではありません。テレビに出てくる「政治家や文化人」の中にも「ら抜き」を自然に使っている人も多く見受けられます。民放テレビ局の中には「ら抜き」にこだわらない情報番組もだいぶ出てきています。
 また,<自分が使うのには抵抗があるが人が使う分にはさほど気にならない>,といった意見も聞かれます。「ら抜き」が当たり前の時代になりつつあるのは,否めません。
 しかしながら,「ら抜き表現」には違和感を覚える人がいることや,まだ「ら入り表現」が正当な表現とされていることから,マニュアル文章では「ら入り表現」で書くべきでありましょう。 


 「アナウンサー,特にNHKのアナウンサーには絶対使ってほしくない」との強い思いが一般にあるようなのだ。「放送研究と調査」に掲載された「NHKで『ら抜き』を使わない理由」の記事の中で,塩田雄大専任研究員は次のように記述している。

−−日本人は,NHKの放送に対して,自分がふだん話していることばづかいとまったく同じものを望んでいるわけではない。自分は「ら抜き」で話すけれども,放送には「決して『ら抜き』を使わない話し方」を期待する人が,きわめて多いのだ。(略)視聴者の頭の中では,「NHKらしいことばづかい」のイメージが無意識のうちに形成されており,「ら抜き」を使うのは,現時点では「NHKらしくない」と考えられている。(略)−−    





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