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日本の人口  (1−3  労働人口)

LAST UPDATE:Wednesday, April 22, 2009

1−3 労働人口−−労働人口・労働経済

   厚生労働省の2006年12月まとめによると, 現在のペースで人口減少が進んだ場合,労働力人口(15歳以上の就業者と求職者の合計)は30年以降急速に落ち込み,50年には,04年の水準より2171万人少ない4471万人に減少するとの試算しています。
  いまのところ,労働力人口は,04年に6642万人を底とし,景気回復にとともない増加傾向にあります。総務省が07年1月に発表の06年平均の労働力人口は,景気回復を受け,働く女性や高齢者が増えたこともあって,2年連続で増え,前年比7万人増の6657万人,15歳以上人口に占める割合(労働力比率)は,約60%となりました。


1−3−1 増加傾向にあるサービス業就業者

 サービス業従業者は,全都道府県で増加しています。今後雇用創出が期待される分野は,個人向け・家庭向けサービス,社会人向け教育サービス,企業・団体向けサービス,住宅関連サービス,子育てサービス,高齢者ケアサービス,医療サービス,リーガルサービス,環境サービス−−などです。1996〜2001年の6年間で,約18,000所(増加率1.4%),従業者数で約80万人(増加率7.8%)と増加傾向にあります。

卸・小売業−−正社員増への動き

 卸・小売業の間で正社員を増やし,パート・アルバイトを減らす傾向が顕著です。厚生労働省の毎月勤労統計調査によると,正社員の常用雇用(継続して雇われている労働者)指数は2005年6月まで三カ月続いて前年を上回りました。対して,パート労働者は三カ月連続で減少しています。これは,卸・小売業において,接客向上による競争力強化に向けて,パート社員の正社員への登用,正社員増員の動きによるものです。

 厚生労働省(雇用統計課)はこうした状況について「小売り・卸売業は長年パート従業員に依存してきたが,4月に正社員の新規採用増に対してパート従業員を減らした結果による」との,見解を示しています。 

1−3−2 農業人口 

  日本の農業の抱える問題のひとつに,労働力の減少と高齢化があります。2000年世界農林業センサスによると,日本の2000年の農家戸数,農家人口,農業就業人口は1995年に比べ大きく減少しました。その一方,65歳以上の高齢者は農家人口だけでなく,農業就業人口は増加しており,高齢農業者が日本農業を支えている状況が示されています。
 農業労働力の高齢化日本農業を支えてきた昭和一けた世代は,2000年以降すべて65歳以上の高齢者層となった。今後この昭和一けた世代を核とする高齢者層が,日本農業に大きな影響を及ぼすと予想されます。
 こうした農業就業者が高齢化した背景としては,次の点があげられます。  
・農家後継者の他産業への流出(子は,親の後をつがない)
・農業機械の普及による高齢農作業の可能化
・少子化の進行
・農村の過疎化
 農家人口の減少が続く一方で,高齢者比率がさらに高まるとみられる。また農業従事者も昭和−けた世代がリタイアした後も,高齢者中心のままで一定程度推移すると予想される。 

 

@ 農家人口

1)基幹的農業従事者
 自営農業に主として従事した世帯員(農業就業人口)のうち,ふだんの主な状態が「主に仕事(農業)」である者
2)農業就業人口
 自営農業のみに従事した者または自営農業以外の仕事に従事していても年間労働日数でみて自営農業が多い者
3)農業従事者
 15歳以上の世帯員で年間1日以上自営農業に従事した者農業専従者農業従事者のうち自営農業に従事した日数が150日以上の者

      参考HP:わが国農家人口と農業労働力の将来推計
        農業総合研究所が日本の農家人口をコーホート分析で予測。

A地域の労働人口の動向

 ここ10年間,日本の失業率は上昇しており,特に東北,近畿各県の上昇幅が顕著です。失業率上昇の主因は,1990年代前半は人口の増加,後半は就業者数の減少にあります。
 製造業就業者数が1990年代を通じて減少する中,雇用の下支えとなっていた建設業就業者も,工場の海外移転など,経済の国際化がマイナス要因となり,90年代後半より減少傾向となり,就業者数全体も減少となりました。
 一方,サービス業就業者は増加しており,特に高齢者ケアサービスの従業者数は各地域とも増加傾向にあります。

 2002年の地域ブロック別の完全失業率は,全国平均の5.4%に対し,近畿,九州,北海道の3ブロックで6%を超えています。特に近畿,東北で失業率の上昇幅が大です。
 都道府県別では,完全失業率は最も低い島根県の3.5%から沖縄県の8.3%まで4.8%ポイントの開きがあります。
 
     平成17年版白書 労働経済の分析 人口減少社会における労働政策の課題
     (労働白書)人口減少社会における労働政策の課題―平成17年版労働経済の分析から

B労働経済白書         

 「平成20年版の労働経済白書(労働経済の分析)・厚生労働省」は,バブル経済崩壊後に企業が導入した業績・成果主義的な賃金制度がうまく機能していないと疑問を投げかけ,評価基準の明確化など制度運用の見直しを求めている。パートなどの非正規雇用の増加については,労働者の仕事に対する満足度を低下させていると分析し,正規雇用の拡大を要請している。

 白書は非正規雇用の増大によって労働者の満足感が長期的に低下していると指摘。正規従業員を増やして賃金を上昇させることが重要とし,特に生産性が高い製造業の正規雇用拡大が課題と位置づけた。労働力が多投入されて労働生産性が低下している小売業,サービス業では,24時間営業など長時間営業を見直して,人口減少社会にふさわしい業態づくりが必要と提言している。

1−4 ニートの増加−進学も職探しもしない若年無業者

 

 人口減少は,日本の経済力の弱体化を招き,さらに,国民の教育や文化,教養など知的水準などにも,影響をおよぼすともいわれています。
 総務省発表の労働力調査によると,2004年の平均の完全失業率は0.6ポイント改善され,4.7パーセントと過去最大の改善幅となりました。だが,労働力人口の減少には歯止めが掛かってはいません。実際にどれだけの人が働いたり職を探したりしているかを示す「労働力率」は,1992年をピークに下がり続けています。特に若年層の15〜241歳の男性の低下が際立ちます。
 その主因は,90年代末イギリスで生まれた概念,『ニート:NEET(Not in Employment, Education or Training)』にあります。なお,「ニート」という言葉が独り歩きし,偏見や誤解を招きかねない状況も懸念されるところです。日本では,「引きこもり」がニートと同意語ととられる面も見られます。就職しようとしているができない人,「家事手伝い」「病気・ケガ」「介護」などなどで就職をしていない人たちをすべてひっくるめて「ニート」とするのは,誤った解釈であります。もともとのイギリスで出てきた時の概念は,社会的なリソースを得られない若者がいることでした。すなわち職業に就けないばかりか,教育の機会も与えられない若者たちがいるという若者が被害者であるというニアンスでした。

 2005(平成17)年労働経済白書によると,ニートの数は全国で64人,フリーターは213万人とされています。ニートのうち25〜29歳は19万人,30〜34万人は18万人です。

 この進学も就職しないニートに加え,定職をもたない「フリーター」の増加を憂う声も聞かれます。当然のことながら収入のないニートは,経済力に欠けます。税収の減少,競争力の低下といった面で日本経済への負の影響が懸念されるとともに,個々の家庭においても,将来の生活設計やマネープランなどを考えると,大きな問題をはらんでいます。
 

 かつての日本社会は,非行少年を社会が受け入れ,更正を促す,「寛容と育成のメカニズム」を持っていた。彼らを受け入れる人と職場のネットワークが機能して,非行少年は社会に組み込まれ,「社会性を持つ大人」になることができた。そのメカニズムの弱体化が,フリーターやニートを生む要因の一つとなっている,とする見解(龍谷大学教授 浜井浩一氏)もあります。
     
     日本犯罪社会学会大会報告書集

@地域での取り組み−−群馬県の事例 

 群馬県のニートは,群馬県内約7000人と群馬県は推計しています。この対策として,群馬県は若者就職支援センターを,高崎市のほかに,桐生市の束毛サテライト,沼田市の北毛サテライトの計3か所に開設しています。案内業務は,NPO法人に委託,職業紹介業務は,民間の職業紹介会社が担当しています。
 群馬県は若者就職支援センター開設に当たり,開設月の2004(平成16)年7月から2005(平成17)年3月までの9か月間の目標を,3か所合わせて来所者数1万人,就職決定者数500人と見込んでいました。しかし,実績は1月までの7か月間で目標を既にクリアしました。来所者の年齢は18歳から35歳くらいまでで,平均は25歳でした。3か所のセンターのうちで,周辺の人口規模が大きく,拠点となる高崎センターが,利用者数,就職決定者数ともに過半数を上回りました。(出典:厚生労働 2005年3月号32ページ)
       関連サイト: NPO法人DNA(甘楽郡妙義町下高田3218-1)

1−5 「移民国家」の足音○○

 少子と超高齢化が進む日本社会で、存在感が高まる一方の在日外国人。その受け入れは、労働や教育の現場に後戻りのできない変化を生みつつある。来るべき「移民国家」の足音は、わたしたちに従来の“日本人”像の転換を迫っている。  ○○              ○


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