ブログ 「流通のいま」:  日経文庫−ビジュアル 流通の基本 (日経文庫)      

問屋・卸売業

          

 

1 日本型流通システムと問屋の位置づけ

 アメリカは,新天地に急速に工業化社会ができたことから,問屋機能(中間流通)は未整備でした。大規模小売業が登場してきたときに,必然的にゼロから流通システムをつくっていかなければなりませんでした。
 対して,日本では,米国や主要先進国に比べて早い段階で,生産者,問屋,小売業という,タテ型の比の流通機構ができあがっていました。日本の流通は,問屋という存在なしに語ることはできません。
 江戸時代は,呉服や米などの生活物資は,大阪など中央都市の問屋→消費地の問屋→小売商人という,商品流通の通のしくみが成り立っていました。その伝統は現在までずっと残っています。 こうした歴史的背景のもとでの日本の卸売業の特徴は,@中小の卸売業が非常に多いことです。1999年の商業統計によると,従業員数1〜20人の卸商店数37万9千店で卸商店数の9割を占めます。A業種型流通と呼ばれるメーカー,卸売業,小売業というタテの流れの中で,薬卸,酒卸,米卸といったように,限定された分野のみを扱う業種卸が多いことです。これは,商品群ごとに全部違った流通が形成されてきた歴史の背景があります。


2 流通の現状

 日本の流通に大きな影響力を持つ総合スーパーの問屋に対する考え方は,二極化しています。
・問屋中抜き―――流通外資,イオン対生配販同盟
 トイザらス,カルフールといった日本進出の流通外資,イオンは,基本的には,メーカーとの直取引,問屋中抜きによる流通コストの低減を目ざしています。対して,ヨーカ堂,セブン-イレブンは,当面は問屋中抜きではなく,優れた経営資源を持つ既存の問屋に,ヨーカ堂やセブン−イレブンに合うやり方での取引を求めています。すなわち対立より,協働を図るというものです。
 事実,規模の小さい産地メーカーが直接,全国的に商品を流通させることは,現実的には不可能です。また消費者の商品に対する要望やイメージについて,正しい情報を得ることは容易ではありません。

 

3 問屋経営のあり方−−時代対応戦略

 少子高齢化時代の到来,経済の縮小期という経営環境を踏まえて,卸売業の時代対応の経営を考えます。いま,流通再編の時代にあって,メーカーが生産する商品を小売業に押しつけるだけという古い問屋体質から脱皮し,流通全体に目配りする卸へと発展していくことがこれからの卸売業に求められるところです。
 そのためには,流通の中継点にあって,メーカーや小売店が抱えている問題に取り組む協働の経営体制づくりととその実践が,卸の存在領域の確保に有効な策です。
 例えば国税庁がまとめた,「酒類産業の現状と今後のあり方」のなかで,酒類卸しの今後のあり方について,次のように提言しています。酒類卸売業界では,卸マージンの低下など収益構造の変化が大きく、機能性の低下が問題である。その打開策としては,専門家による研修・提言,リーディングケース・サクセスストーリーの提供などが必要としています。
 以上のような現状認識を踏まえて,卸売業経営のあり方を以下に示します。



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 ┃┃ 退任の三菱食品・広田特別顧問語る−−「食品卸の生き残りの条件 
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2013-広田
  「卸の産業化」をテーマに、情報・物流システムで食品流通業界をリードした総合食品卸・三菱食品の広田正特別顧問は,2013年2月28日付で退任した。1955年に同社の前身ともいえる旧北洋商会に入社し、旧菱食で89年から18年間、社長・会長に在任。

 広田氏は,“問屋無用論”への挑戦を続け、今日の食品卸業界を産業レベルへ引き上げた功労者と評価されている。  問屋の経営体質が極めて前近代的であった1980〜90年年代に消費市場の変化を読み、生産起点から消費起点型流通の転換へいち早く着手。ITとロジスティクス技術を駆使した経営改革で旧来の常識を覆すビジネスモデルを次々と提唱するなど、進化する中間流通機能の存在価値を強力に提唱した。   氏は,退任前,日経MJで,食品卸の生き残りの条件を次のように語っている。

▼−−デフレ傾向が根強いが、卸売業の役割は。−−  
 「従来は商品を持つ生産者側が強かったが、スーパーの登場で60年代に『問屋無用論』が盛んになった。さらにベルリンの壁の崩壊で、東側の低廉な労働力と資源が西側に流入し、デフレが発生しやすくなった。だが、生産者と消費者の間はすベて『ミドルマン』。消費者が求める商品を効率的に正確に提供できない卸や小売りは脱落する」

▼−−生き残るには。−−
 「入社時の北洋商会は従業員38人で年商11億円。菱食が1兆円規模になった時は400人。生産性が10倍に向上したのはIT(情報技術)のおかげだ。加えて『天の声』に気付くかどうか。73年の石油危機後、小売業の要望で商品を小分けする地域物流センター(RDC)を開発、社会に必要とされる機能につながった」 ▼−−成長のカギは,「ニーズ把握,顕在化前に」−−  「ニーズが顕在化した時にはもう遅い。大衆薬のネット通販の規制緩和の流れなど、経営者は全身全霊で消費者が一番求めている買い方を早く見極めることが大事だ。食品はお袋の味のように保守的な商材だが、21世紀は提供技術の革新でおいしい食品を低コストで届ける機能競争の時代。勢いのある小売業態は変わるが、卸売業は中間流通機能を磨き続ける必要がある」

◆三菱食品
 
  国内外の加工食品、低温食品、酒類及び菓子の卸売を主な事業内容とし、さらに物流事業及びその他サービス等の事業活動を展開している。 ・売上高: 2,318,873百万円(平成25年3月期連結) ・従業員数:4,517名(平成25年4月1日 現在)

▼広田正
 昭和8年生まれ。北洋商会で商品部長、取締役、東京支社長を務める。同社と、三菱商事系の食品卸3社が合併し、菱食となり常務取締役、営業副本部長、専務営業統括本部長、副社長を経て社長,会長を歴任。





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 ┃┃ 米国の問屋機能の実態―――ブローカーの役割
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 米国では,無数のローカルグローサリーストアが群雄割拠していた時代がありました。当時地域に根づき,多くの小売業と密接な商取引を行うブローカーは,“メーカーが必要とする効率的な営業活動を代行する”という,非常に大きな価値を持つ存在でした。こうした経緯のもとで,“生産”と“販売”の成長に合わせて,ブローカーは確実に進化を遂げてきました。
 アメリカのブローカー業界は90年代には,単なる仲介業者から,メーカーの営業とマーケティング活動を店頭起点でサポートするエージェンシーへと変貌を遂げました。食品小売業界で1990年代に進んだ上位集中化の影響を受けて,ブローカー業界も大きく変化し,現在はメガブローカー3社(アドバンテージ・セールス&マーケティング,アコスタ・セールス&マーケティング ,クロスマーク)と,専門性に特化したスペシャリティブローカーに二極化しています。業界1位のアドバンテージ社の売上高は年間6億ドル超(1ドル110円換算だと660億円)です。

●メーカーの販売機能を代行 − CROSSMARK

 CROSSMARKは,業界3位の大手ブローカーである。1万人以上の従業員を擁し,カナダ,オーストラリア,ニュージーランドなど,海外展開も積極的に進めている。特にデータマネジメントの強化が著しく,人的サービスとあいまって,いまや製販双方にとって不可欠な存在となっています。

●メーカーの店頭活動を代行する−Mosaic InfoForce

 全米をカバーするサードパーティ・マーチャンダイジング企業大手の一つ,従業員数は,8000人超。サードパーティ・マーチャンダイジングは時間当たりの料金体系で店頭支援サービスのみに特化する。ブローカーでは埋めきれない店頭サービスの提供で差別化をはかり,1990年代に入り急成長しました。



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変わる力 セブン-イレブン的思考法 (朝日新書)

目次

第1章 「常識」を否定せよ
第2章 過去の経験にとらわれるな
第3章 みんなが反対する事は成功する
第4章 人間求めるのは「質」である
第5章 消費は心理
第6章 経営は「朝令暮改」が当たり前
第7章 基本は「変化対応」
終章 「これから」の道

 鈴木敏文著   朝日新聞出版刊


 世の中の変化に対応し続けるセブンイレブン。このセブンイレブンを作り上げたセブン&アイHD・鈴木敏文会長兼CEOの、問題意識を持ち挑戦する姿勢は、まさにお客のニーズに合わせて変化対応してきたセブンイレブン40年の歴史そのものである。
 鈴木氏がセブンイレブンで見せた思考法は広く認知されているが、本書『変わる力 セブン-イレブン的思考法 (朝日新書)』ではそれを分かりやすくまとめている。だが、実行・習慣化することの困難さは想像に難くない。周囲が反対しても挑戦する鉄の意思と変化を予測する先見性はどこから生まれたのだろうか。
 本書では、鈴木氏が書店取次のトーハン入社後に興味のなかった畑違いのイトーヨーカ堂に転職するまでの経緯。その後の大型店と小型店の共存共栄を目指して米サウスランド社とライセンス契約して日本にはなかったコンビ二事業を立ち上げるまでの経緯。今ではコンビ二業界の常識となった、小口配送、共同配送、温度帯管理、単品管理など、困難にぶつかりながらも実現してきたことを時系列で説明。そして各章で経験から得た変わるための三つの言葉を提案する。
 鈴木氏は周囲に反対されて転職した流通業界に興味はなかった。だからこそ過去の流通業界の成功や常識を疑い、現在の仕事を最後までやり遂げる姿勢を貫いてきたという。流通業界関係者はもちろん、現状の仕事に満足していない多くのビジネスパーソンにも新たな挑戦をするための発想と姿勢を得るものとして参考となる。


FC会議−フェイス・トゥ・フェイスのダイレクト・コミュニケーションに徹底してこだわる

 「単に私の話を伝えるなら、ビデオでも使った方が情報量は豊かに伝わります。しかし、それは一方的なものにしかならない。オーナーにはこの道15年、20年のベテランも多くいます。
 これまでの経験に自分なりに自信を持っている。中には本部の方針に疑問を抱く人もいるでしょう。ただ、コンビニという業態にとって最も避けなければならないのは、店舗経営のマンネリ化です。
 これをいかに防ぐか。オーナーを相手に、仕事の仕方を把握し、もし本部の方針に懐疑的ならば、その背景も理解しながら、今の顧客ニーズの状況を説明し、こういう考え方をしてはいかがでしょうかと、自分なりの考えを伝えて説得していく。それには、ダイレクト・コミュニケーションの質を高めていくしかない。変化の速い時代だからこそ、ダイレクト・コミュニケーションが大切になるのです。


装で計10店舗の展開を目指す。                 参考記事:(2013年6月29日 読売新聞 電子版)



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