05 ホームセンター業界
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ホームセンターは,「雑貨日用品スーパー」ともたとえられるよう,ノンフーズと呼ばれる分野を網羅した品ぞろえと,車での買い物に便利な郊外の大型店舗が,一般の消費者のみならず,農家,建設業など広く業務用ユーザーの支持を得ています。1972年に1号店が誕生以来,1990年代の前半までは,「ラッキー業態」とも流通関係者に比喩されるよう,店を出せば売れるという,順風の時代もありました。
2000年代は,1000坪を持つ大型店の出店が相次ぎ,右肩上がりの成長が続くも大競争時代に突入しました。
経済産業省の商業統計(02年)では,ホームセンターの店舗数の伸び率(前年調査99年対比)は,49.6%と大幅な伸びを示しています。なお,ホームセンター業界全体の市場規模は約3兆6千億円です。
1970年代前半の,「週休2日の余暇時代の到来。職人の減少と手間賃のアップ,衣食につぐ住生活の向上」といった時代ニーズに対応し,1973〜75年にかけてホームセンターが続々誕生しました。
ホームセンターが発展してきた要因は,@店舗は地価の安い郊外への集中し,車での買い物に便利な店として,車社会の到来に対応した,A総合スーパーが効率面から切り捨てた,金物,日用雑貨などの住関連品を幅広く取り扱うすきま商法,B低価格政策を実践してきた点にあります。
ホームセンターは,80年代後半からはディスカウントストア,ドラッグストアといった新業態の台頭,さらに総合スーパーの巻き返しにあって,逆風が吹き荒れ,業績格差は広がり,勝ち組と負け組が鮮明化しています。
これを象徴する出来事が業界パイオニアであるドイト(ヒノデ)の経営破綻です。同社は,07年2月にホームセンター事業をドン・キホーテに売却しました。上位企業が規模の拡大,あるいは専門分野への特化を図る中,ドイトは時流に乗り遅れた,業界からの退出を余儀なくされたわけです。
◆ 低価格競争が激化
いま,ホームセンター業界は上位企業による寡占化が加速しています。07年度のHCの企業数は285社、店舗数は3734店です。97年の企業数551社、店舗数3372店と比較すると、店舗数は増え、企業数は大幅に激減しています。なお,日本DIY協会に加盟している91社で売り上げ,店舗数ともに全体の9割を超え,うち上位25社が大半を占める状況にあります。
不況感深まる中,業界各社に共通するのは低価格化指向です。大手HC各社がこぞって低価格戦略に取り組んでいます。低価格戦略が行き過ぎるとホームセンターのディスカントストア化を招き,同質化競争に陥る危険性が懸念されます。
◆ 最近の動向 農業や建設現場などの業向けの市場開拓に乗り出す
ホームセンター(HC)各社が,一般消費分野の停滞のもとで、農業や建設現場などの業向けの市場開拓に乗り出しました。市場規模2兆円超の農業分野と建設向け市場は、手付かずの「宝の山」と見込んでのことです。
有力な競争相手は農業協同組合(JA)や専門卸であるが、割安感や利便性でHCの市場地位は高まっています。
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大手HCの中ではコメリ(本社新潟)が群を抜いています。。農具・金具と園芸資材を中心に1万5千の商品をそろえる売り場面積一千平方メートル弱の小型店「H&G」を主力に運営。ローコスト経営とバイイングパワーによる価格競争力で、農業生産資材の市場に風穴を開けようとしています。。09年2月末時点で、北海道、沖縄を除く全都府県に802まで店舗を増やしました。
たとえば、農家にとって定番肥料で最も消費が多いといわれる「オール14」の08年度の販売価格はJAの全国平均で2800〜3000円、これに対しコメリは2400〜2600。このほか、農薬や消耗品の資材なども「JAより1割は安くなるように値付けしている」と、価格優位性を追求しています。。
このコメリが国内1千店を目前に控え、次に構築を急ぐのがJAが手掛けてきた農家の生産から販売までを支援するサービス体制でしす。 07年に農家の経営ノウハウを提供する非営利組織(NPO)法人、日本プロ農業総合支援機構(J―PAO)と連携し、昨年九月から店頭で顧客から農業に関する相談を受け付けるサービスを新潟県内の9店で開始。
01年に始めた農薬や肥料、資材の大口販売は10%伸びている。農家が金銭収入のある収穫期に合わせて購入商品の一括支払いが可能になる「アグリカード」の保有者数は02年の発行以来、年率20%ペースで増えています。
一方、販売支援では、農家が出品した作物を販売する目的で04年に立ち上げたネット通販「産直市場」も二桁増が続いています。
出典:「流通の基本」,小林 隆一著,日本経済新聞社刊
ホームセンター 有力・ユニーク企業の紹介 −−−−−−−−−−−−
◆セブン&アイが参入 セブン&アイホールディングスは住宅関連商品の販売を目的としたホームセンター事業に参入しました。東京・葛飾区にありイトーヨーカドー金町店の二階部分を改装し、一号店となる「セブンホームセンター」を08年11月に開業しました。 同社は8月にイトーヨーカドー西新井店を改装してディスカウントストア「ザ・プライス」を開業しており、グループ内での業態変化を急いでいます。
かねてから鈴木敏文会長は「今の我々に欠けているのはホームセンターやドラッグストア。何も金がないからやらないのではない。自分の体質が強くならないのに他業種に首を突っ込んでも不採算店を増やすだけだ」と語っていた。
(〒140-0013 東京都品川区南大井6丁目16番16号 鈴中ビル大森)
ホーマック(売上高1795億円,147店舗,北海道・東北・関東地方が地盤),カーマ(売上高1235億円,中部,北陸9県に出店)),ダイキ(売上高1176億円,中国,四国,近畿地方に出店)の3社は,2006年9月に共同持ち株会社“DCMJapanホールディングス”を設立して経営統合しました。各社の株式移転比率はホーマック株1に対してDCMJapanホールディングス株1.4株,カーマ株(中部・北陸地方が地盤)1に対して同2.2株,ダイキ株(四国,中国が地盤)1に対して同1株です。
32都道府県に420店あまりを展開しています。3社の合計売上高は4200億円強で,再大手のカインズ(売上高約2600億円・130店舗)を上回ります。
子会社:ツルヤ
◆ニトリ(札幌市手稲区新発寒6条1丁目5-80)−1972年創業・社長 似鳥昭雄
2006年2月の売上高1567億円,経常利益190億円と,19年連続の増収増益を達成している。同社は,北海道22,東北10,北関東9,南関東28,甲信越3,北陸4,東海11,近畿20,四国2,九州6,沖縄2と全国に117店舗を展開。「ユニクロ」と同じ製造型小売業で,商品の企画,原材料の調達,製造,販売までを一貫して手がける。海外の商品調達先は300社を超えるという。
ニトリのビジョンは低価格,適正な品質,充実したカラー,サイズ,機能である。「お値段以上,ニトリ」を掲げ,自社で原材料の調達,組み立て,輸入,販売を一貫して行っている。 学習机は年間7万7千台も販売し全国シェア10%で「日本一」の実績をおさめている。
リクルートまとめの07年卒業予定の大学生の就職希望企業ランキングでは,ニトリ51位,高島屋106位,伊勢丹117位と,小売業トップにあります。
■ ニトリ 業績の推移(2月期)
年度 売上高 経常利益
00年 489 35
01年 629 36
02年 787 68
03年 882 89
04年 1087 130
05年 1294 152
06年 1567 190
単位:億円
・人気就職先
リクルート(2006年4月発表)がまとめた,2007年卒業予定の大学生の就職志望企業ランキングによると,小売業関連ではニトリが51位と最も高く,高島屋106位,伊勢丹117位,イオン139位を大きく引き離しています。
◆ツルヤ
ホーマックの子会社でホームセンターを展開するツルヤ(札幌市)。現在店舗数は道内や青森県町村を中心に31店。同社は人口5000人程度の小商圏を対象に1000u前後の比較的小規模の店を出している。
積極出店に乗り出し,道内や北東北に5〜6店の出店を計画。今後3年間で20店を出店し,2009年2月期末までに50店体制を目指しています。
◆コメリ(新潟県新潟市清水4501-1)
HCおよびコメリハードアンドグリーン(H&G)という店舗(住・暮らしをテーマとしたコンビニエンスストアのような業態)を,1都1府17県にわたって多店舗展開。主力商品は,DIY用品(ハード)や,植物・園芸用品(グリーン),ペット用品等。H&Gは,資材館付きの300坪タイプが中心です。
コメリは08年11月から「暮らし応援宣言」と銘打ち,生活日用品やペット用品,季節商品など約520品日を対象に,通常価格の1〜3割値下げして設定。安売りを目玉に客数の回復や来店頻度の工場が狙い。
◆ケーヨー
(千葉市若葉区みつわ台1-28-1)
千葉県,茨城県を中心に,「ケーヨーデイツー」を宮城から兵庫まで1都2府16県に186店舗を出店(2005年)。事業理念の原点は「チェーンストア経営」と「ローコストの追求」。1つのエリアに集中的に店舗を出店する「ドミナント戦略」をとります。
住まいと暮らしを便利に快適にする商品(インテリア,園芸,カー・レジャー,家庭用品,電器,DIY用品など)を通じて社会に貢献することをテーマにセルフサービス形式のホームセンターチェーンを経営。さらに「ふだんの暮らし総合店」というケーヨー独自のスタイルの確立を目指しています。
◆ジョイフル本田(土浦市富士崎1-16-2)
経営指導型でグループ化を進めるのがジョイフル本田です。同社は,大型店の経営・運営ノウハウを同業他社に供与することで,着実に事業領域を拡大しています。
ジョイフル本田USAから輸入した本場アメリカの商品も販売。品ぞろえは,18万アイテムと豊富。
●カインズ(群馬県高崎市高関町380番地)
カインズホーム (CAINZ HOME)は群馬県高崎市に本社があるベイシアグループのホームセンター。売場面積3000坪クラスの大型店舗で住関連商品の販売に加え,業務用建築資材・農業資材を取り扱います。北関東を中心に東北・関東甲信越・東海・近畿に出店しています。
いま, ディスカウント色をー層強めるのがカインズ。値下げを開始したのは08年1月から。NB商品の値下げと同時進行で進めているのがPB商品の拡大。カインズでは海外メーカーに委託生産した自主企画のPBや,国内メーカーとの共同開発商品の開発を加速。フッ素樹脂加工の鍋が980円など,メーカー品に比べ3〜5割程度安い価格に設定。
◆くろがねや (甲府市中小河原1-13-18)
山梨県を中心に店舗を展開するくろがねや(山梨県)2006年3月発表の2005年5月〜2006年2月の業績は,自動発注システムの稼働による店舗作業の効率化,寒波の影響で暖房関連などの冬物商品の販売が好調だったことなどから,売上高は123億8700万円と前年同期比1%増,営業利益は3億6300万円と約2.2倍増,経常利益は4億1600万円の82%増,純利益が前年同期比2.5倍の2億8400万円と増収増益となりました。
◆ニシムタ (鹿児島市与次郎1丁目10番1号)
1958(昭和33)年西牟田小型部品商会を創業(卸売)。カー用品,DIY用品,家電製品,園芸用品,インテリア用品など,幅広い品ぞろえ。売場面積は700坪から,広い店舗では2,000坪以上。とりわけカー用品とDIY用品の充実は定評あるところです。
◆参考HP
京都府のホームセンター来店者実態調査報告書 (平成10年京都小売商業支援センター)
ホームセンターリンク集 日本DIY協会リンク集