05-08 百貨店(Departmrnt Store)
関連サイト: 日本百貨店協会
last updated: Thursday, January 31, 2013
「department store」は,百貨店と訳されているが,直訳すると,部門別小売業となる。日本標準産業分類では,百貨店(産業分類541)のうち「売り場面積の50%以上についてセルフサービス方式を採用している商店」をスーパー,それ以外を百貨店と呼んで区別している。スーパーが,顧客が棚から自由にカゴに欲しいものを入れていくセルフサービスをとるのに対し,百貨店は基本的には,店員が対応する対面販売をとる。
百貨店の全売上高は,ピーク時の1991年の9兆7千億円から04年は7兆9千億円と13年間で1兆8千億円の売上高減少となっている。
なお,小売業の販売総額は年間で約130兆円程度であり,そのうち百貨店が8%位を占める。また,約2割の26兆円程度をショッピングセンター,総合スーパー(GMS)が12%を占める。
最新の商業統計(平成19年度版)によると,コンビニの市場規模(年間売上高)は,約6兆9000億円・店舗数は約4万3000店と拡大しているが,デパートの市場規模は約7兆6000億円と縮小傾向が止まらない。
日本が,欧米の先進国から技術や文化を導入し,近代化に邁進していた時代のまっただ中,日本の百貨店のさきがけとして,1914(大正3)年,東京日本橋に三越百貨店が開店した。これが,現在の百貨店の原型である。
開店当時の三越の広告には,「当店販売の商品は今後一層其種類を増加し凡そ衣服装飾に関する品目は一棟の下にて御用弁相成候様施設致し」とある。すなわち,近代建築の大店舗で,時代の先端をいく商品を幅広く品ぞろえというのが,うたい文句であった。
当初,百貨店の運営母体は,三越をはじめ呉服店からの業態転換が主体であったが,第一次世界大戦後,私鉄駅前点に私鉄系資本による百貨店が全各地に出店し,業態を確立した。
その,先陣を切ったのが1929年に大阪梅田に開店した阪急百貨店である。ターミナル駅に百貨店を開設することで,沿線住民の利便性を高め,鉄道の利用をうながすと同時に,百貨店の存在で沿線の不動産価値を高めるという目論みのもとで,百貨店は,鉄道と沿線の不動産開発を加えた三点セット型の事業によって日本全国への広がりを見せた。
すなわち,時代のトレンドとして,日本の「近代化」を,大都市から地方へと波及させていく役割をも果たしたのである。
その後,日本経済の高度成長に伴い,1960年代には流通の主役の座をダイエーに代表される「GMS(General Merchandising
Store:総合スーパー)」に取って代わられた。
1 百貨店業界−長期低迷
百貨店は歴史を持ち,信頼度が高い点。だが,のれん依存の殿様商売,有名ブランドの売り場の寄せ集め「場所貸業」と揶揄される主体性のなさが顧客離れを招き,さらに,経済停滞下でのる買い控えの影響,紳士服専門店や家電量販店などの専門ディスカウンターの低価格販売に敗退し,最盛時の91年の売上高9兆7000億円以降,長期におよぶ業績低迷,縮小を余儀なくされている。
日本百貨店協会発表の「全国百貨店売上高」よると,全国の百貨店の売上高(既存店ベース)では,97年をピークとして,連続の前年割れが止まらない。
地方では,大型ショッピングセンターの出店もあって,地方百貨店の多くは苦境に直面している。分野別では紳士服・洋品販売額は,縮小傾向は歯止めがきかず,ピーク時には約1兆円の売上規模であったのが,2003年度で約6200億円にまで落ち込んでいる。また,03年の業界の総従業員数は約9万3600人と91年時点の3分の2に減少している。
2 業界動向
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┃★ JR西日本伊勢丹が94億円の債務超過・大阪店不振
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JR西日本の発表によると,JR大阪三越伊勢丹などを運営する子会社、ジェイアール西日本伊勢丹(京都市下京区)が、2012(平成24)年12月時点で94億円の債務超過に陥った。不振の原因は,JR大阪三越伊勢丹の営業不振にある。
JR西日本伊勢丹にはJR西が6割、三越伊勢丹ホールディングスが4割を出資している
JR西によるとジェイアール西日本伊勢丹の資本金と資本剰余金の合計は180億円だが、累積赤字は274億円に達したという。債務超過になると全ての資産を売却しても債務が返済できず、今後の資金調達も困難になる。
◇JR西日本−平成25年3月期 第3四半期決算短信〔日本基準〕(連結)より
http://www.westjr.co.jp/company/ir/financial/pdf/13/05.pdf
(1)連結経営成績に関する定性的情報
A流通業
「JR大阪三越伊勢丹」では、独自性の高い商品やサービスの提供に努めるとともに、厳しい商環境等を踏まえ、地域のお客様からご支持を得られるような店づくりに取り組みつつ、事業再生を目指した抜本的な対策について検討を進めているところです。また、大阪駅に商業施設「エキマルシェ大阪」を、同駅や天王寺駅に複合型コンビニエンスストア「アントレマルシェ」を開業するとともに、鳥取駅で物販ゾーンを開発するなど、駅の魅力向上に向けた取り組みを推進しました。このほか、岡山駅西口にビジネスホテル「ヴィアイン岡山」を開業しました。
この結果、流通業の営業収益は前年同期比0.5%増の1,764 億円、営業損失は4 億円となりました。
■再生のカギは「地域性重視のマネジメントとマーケティング」にある
JR大阪三越伊勢丹が苦戦する一方、他のJR駅ビルの百貨店はいずれも好調に推移。JR東海が名古屋駅に建てた駅ビル「JRセントラルタワーズ」に、2000(平成12)年に開業したジェイアール名古屋高島屋は,2011(23)年3月以降、単月の売上高では地域一番店の松坂屋名古屋店を上回る月が増加している。
開業当初、ジェイアール名古屋高島屋も苦戦したが、JR東海は「鉄道会社は流通に詳しくない」とし立て直し策はすべて同店の運営会社に委ねた。このJR東海の「カネは出すが口は出さない。責任はJRが取る」スタイルに対し、JR西は「カネも出すし、口も出す」手法だが、百貨店の現場にとってはJR東海方式がやりやすいのは明白だ。
開業から約1年8カ月が過ぎても、大阪の街には浸透せず、売り上げが伸び悩むJR大阪三越伊勢丹。消費者の支持を得るには,売り手都合のマネジメントやマーケティングではなく、地域性を重視したエリアマーケティングの展開が求められる。
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┃★ 三越伊勢丹HD,通期最終益は64%減に JR大阪三越伊勢丹の不振響く
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2012年11月9日,百貨店の三越伊勢丹ホールディングスは,2013年3月期の連結業績見通しを下方修正した。売上高は従来予想を60億円下回る前年比0・5%減の1兆2340億円,最終利益は予想を80億円下回る同64・3%減の210億円。
昨年5月に開店のJR大阪三越伊勢丹(大阪市)の営業不振により,同店を運営するグループ会社が出した特別損失を,中間期で営業外損失として計上したほか,景気の先行き不透明感から,消費動向が引き続き厳しく推移するとの見通しによる。
JR大阪三越伊勢丹は,三越伊勢丹ホールディングス(出資比率40%)とJR西日本の合弁会社JR西日本伊勢丹が運営している。三越伊勢丹といえば,約1兆2400億円の売上高を計上する百貨店のトップ企業であるが,大阪では11年5月のオープン以来,不振を極める。
初年度の売り上げ目標550億円に対して,実績は310億円にとどまり,今年度の目標も340億円と低調である。
3 百貨店戦争 博多、大阪、東京有楽町・銀座
新規出店・増床で争点となった場所は博多、大阪、東京有楽町・銀座の三地域である。
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┃★ 大阪 百貨店戦争
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「黒船がやって来る・・・」,2011年春から始まった大阪百貨店戦争。当初,主役と見られていたJR大阪三越伊勢丹であったが,開業後に客の支持を得たのは,無名に等しかった隣の専門店ビル「ルクア」の方だった。専門店ビルの台頭という消費の新しい潮流にJR大阪三越伊勢丹は翻弄されている。
大阪では、JR大阪駅の再開発「大阪ステーションシティ」プロジェクトで、サウスゲート、ノースゲートという二つの高層ビルが完成。南側では1・フロントリティリング系の大丸梅田店が大増床。一方、北側もJR大阪三越伊勢丹、lR西日本系の専門店街ルクアと、合計三施設が相次いで開店した。
三者の中で最も成功を収めているのはルクアだ。店舗面積がーR大阪三越伊勢丹 (売り場面積約五万平方b)の半分以下にもかかわらず、当初の年間売上高目標の250億円を320億円に上方修正。
大丸梅田店は,ポケモンセンターなどを誘致したことで、家族連れなど新たな顧客を誘致することに成功、手堅く売り上げを上げている。
それに比べ、大放したのがJR大阪三越伊勢丹。伊勢丹流のブランド別に区切らない自主編集売り場などで差別化を狙ったが浸透せず、当初の年間売り上げ目標550億円から350億円へと大幅に下方修正を余儀なくされた。
◆阪急百貨店梅田本店が先行開業

出典:http://www.h2o-retailing.co.jp/news/pdf/2012/120417grandopen.pdf
エイチ・ツー・オーリテイリングの阪急百貨店梅田本店(大阪市北区)が約7年におよぶ建て替え工事を終え、2012年11月25日、売り場の約8割が先行開業した同日の入店客数が20万人、売上高が18億円だった。その後も好調で,6日間の売上高が前年同期比2倍、来店客数は2・2倍の100万人を記録した。
同本店は4層吹き抜けの巨大な広場、レストランなど非物販エリアを増やし、滞在時間を長くすることで売り上げの拡大を狙ったいる。
エイチ・ツー・オーリテイリングは10月31日、旗艦店の阪急百貨店梅田本店が好調なことから,平成25年3月期連結業績予想の売上高を20億円増の5350億円に上方修正した。
>>>「危機的状況ではない」JR大阪三越伊勢丹,売り上げ低迷でも強気
ジェイアール西日本伊勢丹(京都市下京区)の瀬良知也社長は2012年8月,産経新聞のインタビューに応じ,開業初年度の売上高が当初目標の約6割にとどまったJR大阪三越伊勢丹(大阪市北区)について,「現時点で出店時のコンセプトを崩したくはない」と強調。ブランドではなく,商品ごとに売り場を設定する“自主編集売り場”など他店にない独自性を維持する考えを示した。
瀬良社長は,維持の理由について,新規カード会員数が順調に増えていることに加え,今夏の中元商戦の売上高が前年を上回ったことを挙げ,「今の店に関心を持つ人がいる。少なくとも誰からも見向きをしてもらえない危機的な状況ではない」と分析している。
一方,大阪市内の百貨店で唯一,7月のセールの開催日を前年の1日から13日に先送りしたことについて「初日の売上高は前年よりも増えた」と評価。来年1月の冬のセールについても「(2日の)初売りとセールの同時開催は買い物客にとって最善のことなのか」と述べ,今夏同様に開催日を1月中旬以降にずらす可能性を示唆した。
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┃★ 博多 JR博多シティ
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博多は、東日本大震災直前にJR博多駅の新ビル、JR博多シティがオープン。博多阪急と1R九州系のアミユプラザ博多はともに目標を上回る好調ぶり。館全体の年間目標売上高700億円(うち博多阪急は370億円) を大きく上回った。だ。九州最大規模の食品売り場、若い女性の開拓、さらには物販だけに頻らない店づくりを目指した博多阪急は前評判通り好調を持続。一方、九州一の繁栄を誇ってきた天神地区は顧客を奪われている。

リクルート(東京)が発行する国内旅行情報誌「九州じゃらん」が発表した「九州・山口人気観光地ランキング」で,2011年に行った観光地ランキング
2011年に宿泊もしくは日帰りで訪れたことのある観光地で,「博多(博多駅周辺)が,前回調査3位から2位にランクアップした。
これは,JR博多シティの出店で,博多駅周辺が一大ショッピングエリアに変貌していることを,物語るものでもある。
調査は2012年2〜3月,同誌読者を対象に実施。温泉地やレジャー施設など102か所について,「行って良かった観光地」,「今年泊まりに行きたい観光地」などを聞き,2819人から回答を得た。
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■ 調査概要
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調査時期:2012年2月1日〜2012年3月31日
調査対象:『九州じゃらん』の読者
調査方法:下記発売号にアンケートを掲載,綴じ込みハガキ(送料無料)で返送
発売号:『九州じゃらん』2012年3月号(2月1日発売)・4月号(3月1日発売)※いずれも宿泊券を賞品としたクローズド懸賞として公募
有効回答数:2,819人
対象観光地:福岡県,佐賀県,長崎県,熊本県,大分県,宮崎県,鹿児島県,山口県の8県から,計102の観光地を選択肢として設定した。
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◆「JR博多シティ」は「アミュプラザ博多」と「博多阪急」で構成
JR博多駅に開業のショッピングセンター「JR博多シティ」は,「アミュプラザ博多」と「博多阪急」からなる複合商業施設である。延床面積は約20万平方メートル,営業面積は約10万平方メートル。小売り,飲食店で構成する駅ビルとしては国内最大級の規模である。
核テナントとして「東急ハンズ」とシネマコンプレックス「T・ジョイ博多」が出店している。
「博多阪急」は,営業面積約4万2000平方メートル。博多地区にはすでに岩田屋,福岡三越,大丸博多天神店の3百貨店があり,従来型の百貨店モデルでは顧客獲得は難しい。そこで,博多阪急はターミナル立地を生かし,他店と差別化した売り場で幅広い顧客をターゲットとしている。
ストアコンセプトは「暮らしの学校」。顧客の関心事とターゲット層を明確にし,それぞれをひとつの“ワールド”として売り場を作っている。そのなかでは「モノ」だけでなく「コト」にも着目。全館20カ所にコミュニケーションスペース「コトコトステージ」を設け,体験や実感できる仕掛けを通して,ライフスタイルのヒントを提案しているのが大きな特徴である。
小倉,長崎,鹿児島に続くJR九州4番目のアミュプラザである「アミュプラザ博多」は営業面積約5万7000平方メートル。ファッション,雑貨,レストラン,食品,エンターテイメントなど229の専門店が出店している。「自分らしいスタイルを楽しむ女性,毎日の生活を楽しむ女性」を戦略ターゲットに,カップル,家族連れなど幅広い層からの集客を目指している。
核テナントのひとつ,東急ハンズは1階〜5階に,T・ジョイ博多は9階に入居。1階「パーソナルギフト」,2階「スタイリッシュゲート」,3階「オーセンティックスタイル」,4階「アーバンカジュアル」といった具合に,各フロアにテーマを設け,それに沿ったテナントが出店している。
もう一つの核テナントである「東急ハンズ」は,約3700平方メートルの売り場面積で出店。事前に行った消費者アンケートの結果,「東急ハンズに対する期待のうち,約7割の人が豊富な品揃え」と回答していることから,同店では約10万アイテムの商品を取り揃えた。
特に,九州色を打ち出した売り場が出色である。1階「旅」をテーマにスーツケースや旅行小物などを販売するフロアでは,独自編集のスーベニアショップ「はかた・び」は,九州各地から集めた地元の名産品を品ぞろえしている。
4 業界再編
景気が回復途上にあった2005〜2006年においても,百貨店業界全体では販売額は減少一途であった。特に注目される点は,百貨店の最重要分野である婦人服の不振である。これまで,婦人服部門は景気などにあまり左右されず,売上も比較的安定していた。
それが,今,婦人服の落ち込みが大きい。消費者の百貨店離れとそれに伴う業態の存在意義の脆弱化が懸念されるところである。
これが示すように現在百貨店が抱えている問題は,景気が回復すれば解消するといった一時的なものではない。百貨店が抱える問題の本質は,慢性的な顧客離れにある。
業界再編への動きも進んでいる。そごう,西武百貨店のセブン&アイ・ホールディングス傘下入り,07年9月の 大丸と松坂屋ホールディングス,伊勢丹と三越の経営統合,07年10月には阪急,阪神両百貨店の経営統合が実現している。
また,独立路線を貫いてきた高島屋も,阪急百貨店と阪神百貨店を傘下に持つ,H2Oリテイリングとの統合の意向を明らかにしている。高島屋とH2Oの提携により,キタ(梅田)とミナミ(難波)の両地区で,年間売上高1000億円を大きく超える巨艦店を3店舗擁するグループが誕生する。
これにより,百貨店業界は,売上高1兆円規模の4グループに再編されることになる。の動きも注目される。地方の百貨店を含めて,百貨店業界の再編の動きが続きそうである。
百貨店の地方店舗は,郊外型の大規模ショッピングセンター(SC)など他業態との競争激化で疲弊している。こうした状況のもとで,都市中心部に出店する百貨店は,百貨店本来の魅力・強みである「品質の高さ」「個性ある店」を前面にだし,団塊世代の富裕層を取り込み策を目論んでいる。この層の人たちの関心の高い「健康」「旅行」「趣味」といったテーマに対応売り場を設け,「上質な商品と快適なサービスにはお金を惜しまない」と考える人たちの来店を促すのが狙いである。
いずれにしろ,「何でもそろう百貨店」では,スーパー,専門店にネット通販を含めた流通業界での競争に生き残るのは厳しい。いかに地域特性に対応した個性のある店舗を出店展開できるかが,生き残りのカギとなる。
○大丸と松坂屋が経営統合
大丸(大阪市)と松坂屋ホールディングス(名古屋市)は07年9月3日,経営統合し,百貨店業界首位となる持ち株会社「J・フロントリテイリング」が発足した。同社は2008年度中にカードや商品政策などの基幹システムを統合するなどして,百貨店事業の経営効率化を図る。
大丸と松坂屋はまず08年3月にカードシステムを一本化。両社で400万人に達する顧客情報を共有し顧客情報の分析などに活用し,仕入れの共通化に反映させる。さらに百貨店運営の根幹となる商品政策や顧客情報などの基幹システムも08年9月をめどに大丸の仕組みに一本化する。
そごうと西武百貨店を傘下に持つセブン&アイ・ホールディングスが,業績不振のそごう心斎橋本店(大阪市)を売却する方針を固めた。大丸と松坂屋で構成するJ・フロントリティリングが買収する方向で交渉に入っており,近々にも基本合意する見通し。売却額は数百億円で,夏ごろの売却完了を目指している。同店の隣接地には,大丸心斎橋店(3万7000u)がる。(写真はそごう心斎橋店)
・横浜松坂屋 08年10月で閉店…144年の歴史に幕
J・フロントリテイリングは,松坂屋の子会社,横浜松坂屋(横浜市)を10月で閉店すると発表した。業績低迷や建物の老朽化が理由で,144年の歴史に幕を降ろす。
横浜松坂屋は1864年,横浜の中心街だった伊勢佐木町に呉服店として創業した老舗。売上高は92年2月期の約300億円をピークに減少。08年2月期には約87億円と落ち込み,累積赤字は22億円に達していた。
株式会社
大丸
○三越と伊勢丹統合決定・比率0.34対1 :三越伊勢丹ホールディングス(IMHDS)
百貨店業界4位の三越(2007年2月期連結売上高は約8041億円と同5位の伊勢丹(2007年3月期連結売上高7817億円)は,08年4月1日に持ち株会社を設立して経営統合した。統合比率は三越株1に対して伊勢丹株0.34。売上高の合計は1兆5800億円と,百貨店としては国内最大。「世界随一の小売りサービス業グループ」を目標に統合5年で営業利益率5%と,現在の伊勢丹(4.1%)を上回る高収益体質を目指す。
▼事業再構築計画の認定を受ける
三越伊勢丹ホールディングス(IMHDS),伊勢丹,三越は,09年7月,「産業活力の再生と産業活動の革新に関する特別措置法」に基づく事業再構築計画の認定に基づく事業再構築計画の認定を受た。
認定した事業再構築の内容は,首都圏旗艦3店(三越日本橋本店,伊勢丹新宿本店,三越銀座店)への集中投資を行い,グループ収益の向上,ブランド力の先鋭化を進めるとともに,サプライチェーン改革を強力に推進する。
この認定により,登録免許税の軽減,不動産取得税の軽減の支援措置を受けることが可能となった。
◆地域事業会社 独自性生かす戦略
さらに,百貨店事業の再編に向けて,2010年4月に地域事業会社化を実施し,権限委譲や全国一律の給与体系の見直しなど分社化によるコスト削減を行い,地域密着型の新しい営業体制を構築し,迅速で細やかな営業施策の展開を推進する。
IMHDSの100%子会社として,札幌・仙台・名古屋・広島・高松・松山・福岡にそれぞれ会社を設立し,準備を進め,2010年4月に三越から各地域の百貨店運営事業を各社に移管する。
◇ 09年9月中間連結決算は4億円の営業赤字
09年9月中間連結決算は,08年4月の統合以来初めての営業赤字を計上した。売上高は前年同期比12.5%減の6171億円,本業のもうけを示す営業損益は4億円の赤字(前年同期は112億円の黒字)で,純利益は65.9%減の41億円である。なお,全国展開する百貨店では唯一の営業損益赤字という,不名誉な結果となった。
○丸井今井を支援
民事再生手続き中の北海道の老舗百貨店,丸井今井(札幌市中央区)は09年4月30日,取締役会を開き,三越伊勢丹ホールディングス(HD)を支援企業とすることを正式に決定した。譲渡額は店舗など不動産に在庫の商品などを合わせて130億円超となったもよう。
三越伊勢丹HDは,現存する丸井今井の4店舗のうち,札幌店と函館店で,それぞれ受け皿となる会社を用意し,札幌店を中心とした丸井今井の再生を図る方針である。札幌店がある札幌市の大通地区には,傘下の三越札幌店もあり,共同の販促キャンペーンなど一体となった大通地区の活性化」を目指す。
株式会社 三 越
株式会社 伊勢丹
○阪急と阪神が合併,「阪急阪神百貨店」に
持ち株会社エイチ・ツー・オー(H2O)リテイリングは08年3月,傘下の阪急百貨店と阪神百貨店を10月1日付で合併して「阪急阪神百貨店」を設立すると発表した。H2O傘下のまま阪急百貨店が存続会社となり,阪神百貨店を吸収合併する。店舗名は合併後も変えない。
新設会社の会長にはH2Oの椙岡俊一会長が,社長には阪急百貨店の新田信昭社長が就任した。この合併で阪急主導色が一段と強まった。
株式会社 阪神百貨店
株式会社 阪急百貨店
○デパート ミレニアム,西武,そごう合併 仕入れ・販売一体で効率化
セブン&アイにとって当面の課題は,06年に約2000億円で買収したそごうと西武百貨店の持ち株会社,ミレニアムリテイリングの再構築である。08年8月中間期の西武とそごうの売上高は単純合算で前年同期比2%減,営業利益は16%減と低迷した。。
そこで,ミレニアムとそごう,西武百貨店は,8月1日付で合併し,合併新会社の社名は「そごう・西武」で,そごうを存続会社として,他の2社を吸収合併し,持ち株会社のセブン&アイ・ホールディングスの傘下となった。西武百貨店16店舗,そごう12店舗,グループでは計28店舗がある。
西武百貨店池袋本店をグループの旗艦店に位置づけ,旗艦店の数店舗を軸とした「商勢圏」を設定し,旗艦店がリーダーシップを取りながら経営資源の共有を進める。
営業面では,百貨店といえども日常性を強化していく必要があるとし,売り上げが比較的好調な食料品を強化していく。 「。百貨店だけが高級ブランドにこだわるのはおかしい。消費者の手に届く価格の商品を充実させ,日常的なシーンを意識した売り場作り指向し,もっと生活を意識したものに変えていく」とし,日常の食卓にあった商品を充実させていく意向。
○高島屋
☆☆◇◇ 支援は高島屋で調整 民事再生の丸井今井 ◇◇☆☆
民事再生手続き中の北海道の老舗百貨店,丸井今井(札幌市)は,高島屋を再建のスポンサー企業に選ぶ方向で調整を始めた。メーンバンクの北海道銀行などの関係者と具体的な調整に入り,同意が得られれば週内にも決定する見通し。正式に決まれば,高島屋は北海道に初めて進出する。
丸井今井の再建を巡っては,高島屋と三越伊勢丹ホールディングス両者は,それぞれ経営再建案を提出,丸井今井はスポンサーの選定作業を進めていた。高島屋が経営再建案で全店存続の方針を示したことを重視したとみられる。 関係者によると高島屋の再建案は,受け皿となる新会社を設立し,本店など3店舗と従業員を引き継ぐ。函館店と旭川店は改装して集客力を高める一方,人員削減や給与水準の見直しなどでコストを減らし,財務体質を改善する。
デパート新聞社−
3 地方百貨店の動向
◆北陸の百貨店「大和」が4店舗の閉店と470名の人員削減へ 北陸地方で百貨店を7店舗を展開する「大和」(本社 金沢市・資本金 34億6,270万)円 は,そのうち,新潟県内の新潟店・長岡店・上越店と石川県内の小松店の計4店舗を閉店する。これにより,同社が運営する百貨店は香林坊店・富山店・高岡店の3店舗のみとなる。
経営資源を主力店である香林坊店・富山店に集中することで危機を乗り切りたいとし,採算が悪化している4店舗の閉鎖により収益改善を目指す。
また,4店舗閉鎖に伴い,全従業員を対象にした希望退職者の募集による,約470名の人員削減も合わせて行う。
なお,同社は2010年2月期通期連結業績予想を下方修正,純損益で85億円の赤字に陥る見通し。
◆近鉄百,社員の給与削減を継続へ 設備投資も半減維持
近鉄百貨店は,2010年2月末までの予定で実施している係長級以上の社員給与の削減を3月以降も継続する方針を明らかにした。2010年度の設備投資額も中長期経営計画(19〜26年度)の策定値よりほぼ半減させた21年度並みの水準を維持する見通しで,業績立て直しに向けて一層の費用削減に取り組む意向である。
近鉄百貨店では09年1月から役員報酬を削減し,6月には削減率を20〜30%に拡大したほか,全社員の約半数にあたる係長級以上の社員約1700人を対象に2〜10%の給与削減も行っている。役員以外の社員については22年2月までに給与削減を終える予定だったが,「経営環境的に(削減を)継続せざるを得ない」と昨年末の取締役会で決めた。
◆井筒屋の債務返済期限延長 社長退任,リストラ実施
業績が低迷している百貨店の井筒屋(北九州市)は,経営立て直しに向け,主要取引銀行の山口銀行や福岡銀行など16社と,借入金計約367億円について返済期限の延長や追加融資などの支援を受けることで合意したと発表した。井筒屋は今後,早期退職者募集などの経営改善計画を実施。中村真人社長が経営責任を取って退任し,影山英雄執行役員が新社長に就く人事も発表した。
個人消費低迷による業績不振で,井筒屋は09年,福岡県久留米市や飯塚市などの不採算店舗を相次いで閉鎖。だが,秋以降も業績は回復せず,10年2月期連結決算の純損益は従来予想の1億円の黒字から30億円の赤字に転落すると下方修正した。
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