ブログ 「流通のいま」:  日経文庫−ビジュアル 流通の基本 (日経文庫)      

チェーンストア経営

          

 米国のチェーンストアを手本に,1950年代に誕生したスーパーは,おりからの高度経済成長の波に乗り,「大量販売」の旗手として,成長をとげました。スーパーは,衣食住全般の生活必需品を総合的に取り扱う総合ーパー,衣料品中心の衣料品スーパー,食料品を主体とし,日用雑貨取り扱う通称食品スーパーの3つの形態に分化・成長を遂げました。

 日本の小売業は,米国流の「チェーンストア経営」の表面的な模倣に止まり,フォードの提唱した「資本と人間の理論の共存」という観点を見落としているなど,本質の追求を欠いているのではないかとの声も聞かれます。
 また,@多民族の米国と単一民族国家である日本,Aまとめ買いの米国に対し当座買いの日本といった購買慣習の違い,B米国と比べ過当競争の状況にある小売業界,といったように日本と米国では市場環境が異なることから,米国流チェーンストア経営の模倣ではない日本流チェーンストア経営のしくみづくりとその実践が求めらます。


チェーンストア(chain store)とは   

  チェーンストア(chain store)とは,単一資本により多店舗展開する小売企業の形態を指します。多店舗展開による大量販売力に裏付けされたバイングパワー(仕入力)で小売業界の主流を占める存在です。日本では百貨店や一部専門店を除き,大規模小売業の大半は,チェーンストア経営を指向します。
 チェーンストアの多くは,経営効率を重視し,本部集権体制で,仕入れ,販売価格設定,販売目標など,店舗運営の主要項目については本部が指示・命令を発し,各店舗はそれに従うという店舗運営を行ってきました。              
チェンストア経営の特徴としては,@ドミナント出店とも呼ばれる特定地域に集中出店し,規模の利益の追求。Aバイイングパワー(仕入力)の発揮による,有利な仕入の実現。B大手小売業は自前の物流センターをつくり,メーカーから直接商品を仕入れ,物流センターで区分けして,全店に一括配送する方式をとっています。これは,問屋中抜きで,卸機能を小売側で吸収しようとするものです。C各社ともデータ活用による競争優位の確立にむけてのシステム開発に積極的に取り組んでいます。 
 なお,効率重視一辺倒の店舗運営は,顧客ニーズへの対応を欠き顧客満足を得られないばかりか,従業員のやる気なくす原因だとの指摘も高まりました。こうしたチェーンストア経営の欠陥を察知し,本部集中経営にとらわれることなく,現場の判断にまかせた,地域特性に対応した店づくりも必要として,本部集中の度合いは弱まり,本部は店の後方支援といった役割を深めています。

 百貨店経営とチェーン経営の違い

 百貨店は,原則として各店舗ごとに仕入・販売を行う支店経営と呼ばれる体制をとります。すなわち, 百貨店の場合,仮に10店舗あるとすると,10店舗,それぞれが客層や地域性などを勘案した店舗運営を行っています。それぞれの店が,地域一番店をめざし,店独自の考え方で見せづくり・売り場づくりを行っています。
 対して,スーパーの店舗や品揃えは,各店とも似ています。これは,スーパーは,標準化された店舗形態に基づく多店舗展開,本部一括仕入れ,本部主導の販促活動など,本部集権型の経営体制による,“規模の利益”の追求にあるからです。  

 


チェーンストア経営の源流  フォードシステム

チェーンストア経営の源流は,フォードの提唱した「大量生産の原理」にあります。その基本原則は,“3S主義”と名付けられている,標準化, 単純化,専門化の3点です。

 フォード・システムは,科学的管理の原理を自動車生産において適用し,大量生産システムの基礎を築き上げました。
@単一製品:工場で生産する車種をT型車のみに絞り,専業化することで,規模の利益を実現した。

A部品の規格化・特定化:互換性部品の採用により,部品の規格化・特定化を実現し,専用工作機の導入を促した。これにより,同一精度の部品の大量生産が可能となり,部品コストの低下を図った。

B作業の分割・細分化:自動車製造過程での,多数の異なる加工・組立作業について,加工組立作業を細分化することにより,作業を単純化した(旧アヴィニュ工場18工程→新ハイランド・パーク工場500工程)。これにより,未熟練労働者によって作業が担われることが可能となった。
C作業の標準化:フォード・システムでは,数千を超える作業を時間研究・動作研究により標準化し,無駄を排した,作業の効率化を目指した。この作業の標準化への取り組みにより,作業のムラ(アンバランス)が減少し,同期化生産が可能となった。

Dコンベア・システムの導入:人が仕事(作業)のある場所へと移動するのではなく,仕事(作業)そのものが人のいる場所へと自動的に流れてくる方式である。作業速度は自分で決定するのではなく,必然的・強制的にコンベアの速度に合わせなければならない。  

ボランタリー・チェーン(VC)

 ボランタリー・チェーン(VC)とは,やる気のある独立小売店が集まって、チェーンを組織した同志結合体″です。 加盟店の独立性を尊重し,やる気を生かしたチェーンオペレーションを展開するところに特色があります。

 チェーン経営に欠かせない本部の機能を持ち,メンバーに対して商流・物流を中心とした商品活動をはじめ,業態開発,財務分析,店舗業務のシステム化など,高度なノウハウを提供により,経営の向上を図る事をねらいとしています。

 米国の小売業には,「小売主宰ボランタリー・チェーン」という言葉はありません。dealerowned coopertive またはdealer-owned wholesaleです。